「セレーヌ、いらっしゃったわよ。」

 顔を上げると、ランスロットさんと父の姿が見えた。

「お待たせして申し訳ございません。おや、それは?」
「ランスロットさんにお土産です。」

 私はランスロットさんの頭に花の冠を乗せた。

「そちらは?」
「こっちは、陛下へのお土産です。」

「陛下はあまり花が好きではないので、私がもらっておきます。」
「2つもいりますか?」

「では、これはセレーヌ様に。」

 ランスロットさんは、私の頭に花の冠を乗せてくれた。

「ふふふ、ありがとうございます。」

「セレーヌ様、もう少し滞在されますか?」
「エルバトリアにですか?」
「はい。久しぶりにご両親と会ったのですから、お別れするのが寂しいかと思いまして。」
「寂しいですけど、また来ればいいですから。帰りましょう、ランスロットさん。」

 ランスロットさんはにっこり笑って手を差し伸べてくれた。私はランスロットさんの手を取った。

「……っ!」

「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ……手が汚れていたのを忘れていて……」

「魔力を使わずに作業していたのですね。」
「使わないでって言ったのはランスロットさんじゃないですか。」

「そうでした。」

 するとふわりと魔力に包まれて、手も服もあっという間に綺麗になった。
 
「なんの魔力かは教えません。行きましょう、セレーヌ様。」
「はい……」

「セレーヌ、がんばるのよ?エルバトリアのことも、殿下のことも考えなくていいからね?」
「ありがとう、お母様。」
「皇帝陛下のもとでお前の力を十分に発揮しなさい。」
「お父様もありがとう。」

 両親はランスロットさんに深々と頭を下げている。私は両親に別れを告げて、私はランスロットさんと歩き出した。

「ランスロットさん、陛下と何を話していたのですか?」
「もう二度とヴァルドラードを攻撃しないようにと釘を刺してきました。」
「それだけですか?」
「何か伝えて欲しいことがありましたか?」
「いえ。」

 ランスロットさんはさも当たり前のように魔力で馬車を作った。馬車へ乗り込むと、勝手に扉が閉じて空へ舞い上がった。