書庫で歴史書を読んでいると、ランスロットさんがやってきた。

「セレーヌ様、両親から手紙が届いたのでお届けに参りました。」
「本当ですか!」

「はい。ですが、少々訳ありでして……読んでみてください。」

 ランスロットさんから手紙を受け取って読み始めた私は眉間に皺を寄せた。

「これは……ステファン様からの手紙なのでしょうか。」
「そうです。今更何様のつもりでしょうか。一方的に婚約破棄をしておいて、彼女と結婚する~とか言っていたのに、両親を使って手紙を寄越すなんて信じられません。最低な男です!」

「ふふふ。ありがとうございます、ランスロットさん。」

 言いたいことをランスロットさんが全部言ってくれた。

「セレーヌ様、念のためお聞きしますが、あのポンコツ王太子のことはどう思っておられるのですか?」
「もう何とも思っていません。あんな風に婚約を破棄されたことは、やっぱり辛かったですから。」

「わかります。あぁ、なんかイライラしてきました。」
「ふふふ。ランスロットさんがそんなに怒らなくても……」

「腹が立って仕方ありませんので、私は明日エルバトリアへ行こうと思います。こんな手紙を皇帝陛下に送ることは失礼なことだと直接言ってやろうと思います。」
「そうですね。私も行っていいですか?ステファン様だけでなく、国王陛下にもきちんとお話ししないといけないと思います。皇帝陛下にはご迷惑をおかけしたくありませんので。」

「では、2人で行きましょう!そして、あわよくば母上のクッキーを頂きましょう!」

「もしかしてそれが目的ですか?」
「そんなことありませんけど?」

 ステファン様がよりを戻したいと思っている理由は、おそらく魔力を抑えられる人間がいないからだ。でも、私はステファン様のところへは戻らない。私はあらためてそう決心した。