「今日はここまでにしよう。」

　日を追うごとに魔力を使える時間が長くなり、お城の掃除にも慣れてきた。だけど、油断すると魔力を消耗して動けなくなってしまう。適度なところで掃除を切り上げて自室へ戻ると、いいタイミングでランスロットさんが現れた。

「セレーヌ様、体調はいかがですか？」

　掃除がひと段落すると、いつもランスロットが様子を見に来てくれる。魔力を消耗している時は新しい魔法石を届けてくれる。

「今日はハーブを使った紅茶です。」
「ありがとうございます！」

　ランスロットさんは、いつも私が飲みたい紅茶を淹れてくれる。

「ランスロットさんは、どうして私が飲みたい紅茶がわかるのですか？」
「それは、私が優秀な執事だからということにしておきましょう。」

「ふふふ、そうでしたね。」

　ランスロットさんはあの皇帝陛下の側近で執事だ。有能なことは間違いない。

「今日は、セレーヌ様のために案内したい場所がございます。来ていただけますか？」

　ランスロットさんに案内されたのは、大きな書庫だった。数えきれない程の本が壁に敷き詰められていて、天井にまで届いている。奥はどこまで続いているのか見えないほど広い。

「すごい……ここは、魔力の書庫ですか？」
「その通りです。欲しい本を唱えれば飛んできます。ご自由にお使いください。」
「ありがとうございます！」

　本棚を見ると、初心者向けの本から難しい本まで様々な本が並んでいる。

「まずは……浄化の魔力の本をください！」

　唱えると手元に何冊かの本が積み上げられた。読んだことがない本ばかりで、新しい本からものすごく古そうな本まである。

「ありがとう！最初は簡単な本からかな。」

　私は椅子に腰掛けて本を読み始めた。