アルフォンスは、セレーヌが出て行った扉を見つめていた。セレーヌは思った以上に魔力が高く、さまざまな魔力を操ることができる。流石、ブランシェール家の血筋だと思ったが、疑問が残る。

「なぜあんなポンコツと婚約したんだ?」

 アルフォンスは、かつてステファンがヴァルドラードの国境に攻めてきた時のことを思い出した。

 国境付近が騒がしくなって様子を見に行くと、エルバトリアの兵士たちが結界に攻撃を仕掛けていた。とは言っても、なんの影響もないものだったから放置していると、威勢だけは一人前の何もできない王太子が現れた。

 魔力の強さはそこそこあるものの、魔力を操る力は皆無だった。王太子の自己満足のためだけに集められた兵士たちに同情した。

 翌日、エルバトリアの国王・イグナシオが謝罪に来て王太子の不始末は無かったことにしたものの、あれがエルバトリアの次期国王なのかと驚愕した。

「ポンコツの魔力を抑えるのは大変だろうな。エルバトリアの城は今頃……ははは。」

 王太子の魔力が暴発して大変なことになっているに違いない。アルフォンスは笑いながら机の上にある鏡を手に取った。