空飛ぶ馬車は風のように空を駆け抜けて、あっという間にヴァルドラードの国境近くまでやってきた。
「セレーヌ様、この魔法石を握ってください。」
手のひらに収まるほどの黒い石は、ぼんやりと光を放っている。
「ヴァルドラードの国境は、陛下が結界を張っています。国外の方が通り抜けるのは大変なんです。特に魔力の強い方は、反応が強く出ますから。」
「わかりました。」
魔法石を握りしめると、カタンと軽い音がして、車体がカタカタと揺れ始めた。規則正しい馬の蹄の音が耳に届き、窓に雨が当たっている。
「ヴァルドラードに入りましたよ。体調はいかがですか?」
「大丈夫です。」
「そうですか……(陛下の魔力と相性が良いのかもしれませんね。これは好都合)。」
私は窓の外を見つめた。重い灰色の雲に覆われた空は、本性を見せることはないと言われているような気がして不安になってきた。
「天気が悪くて申し訳ありません。城の近くは雨が多いんです。」
『魔力を高めると天候に影響が出ることもある』と本で読んだことがある。そんなことができる人なんていないと思っていたけれど、ヴァルドラードの皇帝陛下ならできそうな気がする。
「皇帝陛下の魔力の影響ですか?」
「そうなんです。街はうまくやってるんですが、城の近辺は気にしてもらえないんですよね。」
「天気を変えているのですか!?」
「そういうことです。」
エルバトリアで聞いた皇帝陛下の噂の中には、魔力を全て操るとか、とんでもなく強い魔力を持っているという話があった。
「皇帝陛下の噂にはすべての魔力を習得したという話がありましたが……」
「それは本当です。あらゆる魔力を操ることができ、魔力の強さは異常値です。全てが嘘だと信憑性が下がりますから。真実も織り交ぜています。」
「やっぱりそうなんだ……」
天気を操るためにどれだけの魔力が必要なのか、私には想像がつかない。私は魔法石を握りしめた。
「ん……?聞かれたみたいですね。」
ランスロットさんの視線を追うと、重たい雲が左右に分かれて日差しが差し込み始めた。
(ランスロットさんとの会話を陛下に聞かれたってこと!?)
私はキョロキョロと目を動かして馬車の中を見回した。
「セレーヌ様、あれがヴァルドラードの城です。」
窓の外へ目を向けると、霧の中に重苦しい雰囲気の巨大な城が見えた。魔王が住むと言われても違和感がない、圧倒的な存在感と底知れぬ恐ろしさが漂ってくる。
「そのまま城を見ててください。はい、ドンっ!」
ランスロットさんの掛け声で雲の隙間から1本のリボンをかけるように、大きな虹がかかった。
「わぁ、すごい!」
「あれは私の提案です。セレーヌ様、ようこそヴァルドラードへ!」
ランスロットさんはクラッカーを鳴らし、たくさんの紙吹雪を舞い散らせた。しつこいほどやるから、あっという間に足元が紙吹雪で埋め尽くされていく。
「やりすぎですよ。ふふふ。ありがとうございます。」
怖さは拭いきれないけれど、少なくともランスロットさんは歓迎してくれている。私は紙吹雪を散らしながら、霧の中にかかる虹を見つめた。
「セレーヌ様、この魔法石を握ってください。」
手のひらに収まるほどの黒い石は、ぼんやりと光を放っている。
「ヴァルドラードの国境は、陛下が結界を張っています。国外の方が通り抜けるのは大変なんです。特に魔力の強い方は、反応が強く出ますから。」
「わかりました。」
魔法石を握りしめると、カタンと軽い音がして、車体がカタカタと揺れ始めた。規則正しい馬の蹄の音が耳に届き、窓に雨が当たっている。
「ヴァルドラードに入りましたよ。体調はいかがですか?」
「大丈夫です。」
「そうですか……(陛下の魔力と相性が良いのかもしれませんね。これは好都合)。」
私は窓の外を見つめた。重い灰色の雲に覆われた空は、本性を見せることはないと言われているような気がして不安になってきた。
「天気が悪くて申し訳ありません。城の近くは雨が多いんです。」
『魔力を高めると天候に影響が出ることもある』と本で読んだことがある。そんなことができる人なんていないと思っていたけれど、ヴァルドラードの皇帝陛下ならできそうな気がする。
「皇帝陛下の魔力の影響ですか?」
「そうなんです。街はうまくやってるんですが、城の近辺は気にしてもらえないんですよね。」
「天気を変えているのですか!?」
「そういうことです。」
エルバトリアで聞いた皇帝陛下の噂の中には、魔力を全て操るとか、とんでもなく強い魔力を持っているという話があった。
「皇帝陛下の噂にはすべての魔力を習得したという話がありましたが……」
「それは本当です。あらゆる魔力を操ることができ、魔力の強さは異常値です。全てが嘘だと信憑性が下がりますから。真実も織り交ぜています。」
「やっぱりそうなんだ……」
天気を操るためにどれだけの魔力が必要なのか、私には想像がつかない。私は魔法石を握りしめた。
「ん……?聞かれたみたいですね。」
ランスロットさんの視線を追うと、重たい雲が左右に分かれて日差しが差し込み始めた。
(ランスロットさんとの会話を陛下に聞かれたってこと!?)
私はキョロキョロと目を動かして馬車の中を見回した。
「セレーヌ様、あれがヴァルドラードの城です。」
窓の外へ目を向けると、霧の中に重苦しい雰囲気の巨大な城が見えた。魔王が住むと言われても違和感がない、圧倒的な存在感と底知れぬ恐ろしさが漂ってくる。
「そのまま城を見ててください。はい、ドンっ!」
ランスロットさんの掛け声で雲の隙間から1本のリボンをかけるように、大きな虹がかかった。
「わぁ、すごい!」
「あれは私の提案です。セレーヌ様、ようこそヴァルドラードへ!」
ランスロットさんはクラッカーを鳴らし、たくさんの紙吹雪を舞い散らせた。しつこいほどやるから、あっという間に足元が紙吹雪で埋め尽くされていく。
「やりすぎですよ。ふふふ。ありがとうございます。」
怖さは拭いきれないけれど、少なくともランスロットさんは歓迎してくれている。私は紙吹雪を散らしながら、霧の中にかかる虹を見つめた。



