真美と知沙に付いていく幸人。歩いている途中での会話は一切なく、歩き続けていると見たこともないような建物。どこかピンク色だ…建物に入るや否や
「ようこそ…」
「知沙さん…」
「黙って…」
 ここでもまだ口を利いてくれない。真美の方を見た感じ彼女も初めてのようだ。目の前にいるのはバスローブ姿の3人の女性。30代から50代までの年齢で、おそらく真美や知沙と同様に雇われている存在だろう。すると
「さあ…服全部脱いでこっちにいらっしゃい…」
「言う通りにして…」
 知沙からも命令されちゃ服を脱ぐしかない。スーツの上着にワイシャツから、スラックスや下着に至るまで全て脱いだ。真美と知沙、そして目の前にいる3人の女性合わせ5人。おもむろに3人の女性もバスローブを脱ぎ捨て、それに続いて知沙、真美も服を脱ぎ捨てる。真美の傷はまだ生々しく痛々しい…彼は誘われるまま巨大なベットに寝そべると
 ジュボ…
 知沙はそのまま彼の性器を咥える。やはり彼女は水瀬幸人の前じゃ積極的だ。
「真美ちゃんもやりなさい…」
「はい…」
 真美は濃厚なキス。他3人は上半身、足先に至るまで舐め回す。そう。知沙の目的、そして明美が言う「生け捕り」とは今この状態の"快楽沼"へ陥らせること。
「イクッ…」
「……!」
 知沙の口内に射精。さらに
 …ゴク…
 口の中の精液をそのまま飲み干す。これだけでも彼の気持ちは絶頂だ。そのままコンドームを付けようとするが
「そのままで頂戴…」
「危険日…じゃないんですか…?」
「言う通りにして!お願い…」
 彼は命令通り生で挿れる。
「ハァ〜…そのまま…出しちゃって」
「…はい」
 4人の女性に舐められながら知沙と激しく動く。それを眺めている者がいた。
「私たちに近付いた人間は、この快楽沼によって崩壊する…」
 実はこの瞬間は全てカメラに撮られている。遠くから監視している人間こそ奥野明美だ。
「さぁ幸人君…あなたもせいぜい、ここで諦めなさい…」
 ベットを揺らさんばかりの勢いに知沙の快楽も絶頂を迎えそうだ。そしてそのまま
「知沙さん…!」
「出して…!中に出して…!」
「…はい…!…ウッ…!…はぁ…はぁ…」
 彼はそのまま知沙の中に出した。出された精液が流れ出てしまうほど大量だ。そのまま快楽の疲れから身体を休めようとするが
「真美さん…!?」
 何と強制的に勃起薬を飲まされる!それも表では絶対に売られていないほど強力で自分の意思とは無関係に勃ってしまう。そして今度は…
「私の番…ですね…?」
「ええ…やって…」
「はい…うぅ…」
 再びコンドームなしで次は真美の中に。いくら彼とはいえ連続で2回も強制的に射精させられれば抵抗する力を失い、勃起薬の効果で止めようにも止めることができない。
「(今までこの快楽沼に生き延びた男はいないけど、幸人君はどうかしら…?)」
 真美は初めて男性器を挿入された快感に逆らうことができずヒートアップし、幸人の方は全身が硬直したまま彼女の中に出してしまう…
「…ゥ…出る…」
「ゥゥ…気持ち良い…(えっ…挿れられて中に出されるってこんなに気持ち良いの…?)」
「はぁ…はぁ…!真美さん…!」
 ポトポト…
「嘘…?」
「ちょっと無理しすぎたわね?」
 初めていきり勃った男性器を挿入された真美の女性器から血が出ている。どうやら粘膜を一部やぶってしまったのだろう。
「次は佳奈美かしら?」
「はい。久しぶりに20代の若い子…楽しみね…」
 彼は既に3連続で射精している。苦しむどころか反応がほとんどない。まるで人形のように気力を失った彼だが、佳奈美という女性は彼の顔を見ることもなく挿入。
「………」
「出たの…?」
 4回目の射精は眉一つ動かさなかった。流石に真美は
「知沙さん…流石にもうヤバイよ…?幸人は殺さないんですよね?」
「………」
 彼をこの場に誘ってからの計画は事前に立てられていたがここまで快楽拷問を行うことは聞いていない。
「続けるわ…!」
 彼はその後数回に渡り連続で強制射精させられた。もし挿れることができなければローションを使用し、それでも入らなければ口や手で奉仕され続け、さらに勃起力が弱まれば強引に勃起薬を飲まされる。やがて…
「………」
 彼はひきつけを起こして気を失っている。女性側も何回射精させたのか覚えていない。
「今日はもう十分だわ…解散よ…」
 知沙は皆に解散を告げた。知沙と真美以外は帰ったが2人は去ろうとしない。遠くから監視していた明美も既にどこかへ去っている。
「あなたも幸人君のことが好きなの?」
「私は…」
「知ってると思うけど、私は愛してる…」
「だったら何で…こんな真似するんですか…!?」
「明美さんの命令には逆らえない…この先従うしか生きる道はない…」
 彼は朦朧とする意識の中2人に手を伸ばす。だがその目はまるで「助けてくれ」と訴えているのではなく、むしろ「愛してる…」と訴えている目にしか見えない。真美もその訴えに何故か気付いている。
「私も…」
 つい心の声が漏れるが決して想っている言葉はまだ言わない。
「悪いけど真美ちゃんは帰ってて…目が覚めたら幸人君と話したいことがあるから」
「…わかりました…」
 知沙は横に寝そべると優しく胸元を撫でて頬にキスを続ける。一方の彼は目を開けたまま眠っている。果たして彼はこの先何をされるのだろうか…

 その後、真美はアパートに帰ってシャワーを浴びていた。ただシャワーを浴びているだけなのにシャワーをいつまでも性器に当て続ける。当て続けて気持ち良い理由は確かにあるが一番の理由は危険日であるのに生で受けてしまったこと。危険日にコンドームなしで性行為をするのは妊娠してしまうリスクが非常に高い。
「洗えたかな…?(まさか初めて中出しされたのが幸人だなんて…)」
 確かめようにもしばらく日数が経たなければ妊娠しているか確かめられないのは彼女にとって恐怖。妊娠しても子供に罪はないが、母親が殺人犯だなんて笑える話じゃない。彼女は身体を拭きながら今幸人がどんな状態かを考えている。彼がマフィアを殴り殺している姿をリアルタイムで見ていたからこそ、お互いがもう人殺し…皆戻れないところまで来てしまっている…今更足を洗って全うに表社会で生活などできるのだろうか?でもそんなことを考えている余裕はない。22歳という早い段階で結婚してこのまま子供にも恵まれるという理想を描いていたのに、結婚した男がどうしようもない奴…私が暴力を振るわれてなければ人を殺す必要などなかったけど、後悔しているつもりはない…世の中には自分と同じ悩みを抱えている人は沢山いる。知沙さんだってそうだ…彼女は服を着るのも忘れて横たわる。数時間前まで男を抱いていた彼女にとって全裸で寝そべるだけでもエクスタシーだ。
 ピンポーン!
「真美!」
「えっ嘘!?」
 全裸なのに!でも早く開けなかったら怒られそう…もう仕方ない!彼女はバスタオルを巻いてドアを開ける。
「はい…?」
「お風呂入り立てかしら?」
 髪は完全に乾いているがここは上がり立てにしておこう…彼女は明美を招き入れ
「ビールしかないですけど、飲みますか?」
「いただこうかしら。その前に服着なよ?」
「あぁ〜…すいません」
「服着たら飲みましょ」
「すいません。じゃあこれ…」
 プシャッ
「邪魔してごめんね。それより、初Hはどうだった?」
「えっ…(急に聞いてきた…?)」
「旦那より先に幸人君が初体験だよね?でもいきなりあんなことさせて悪かったわね…」
 彼女はビールを飲みながら明美の表情を覗っている。しばらく知沙を見ていた彼女にとって奥野明美も一人の母親であるように見える。母親?前幸人の家から拝借したジャンパーを見て「懐かしい感じ」と言っていたから幸人の知っている友達の母親だろうか?
「確かに初体験ですけど、あれは何の目的でやってるんですか?知沙さんが快楽沼って言ってましたけど…」
 まだ性行為を経験していなかった彼女まで使わされたんだ。それだけの理由があるに違いない。
「快楽沼は私たちに介入して真実を知りすぎた…もしくは知ろうとする男が辿り着く聖地よ」
「聖地?」
「直接罪を犯した男相手じゃないから殺しの対象にはならない。結果的には私たちに抗う力を奪う、嫌でもイカされ続けた男は去勢されたように脱力するの」
「じゃあ幸人は…?」
「あれで諦めてくれればいいけど、あの子は厄介に知沙のことが好きだし…諦めないかもね…けど、私もお母さんに会わせたい気持ちもあるから諦めないでほしいとも考えてる…」
「お母さん…!?」
 今ハッキリと幸人にはお母さんと会ってほしいと言った。でも彼女はまだその母親に会ったことはない。顔を見たことがないならあまり明美の前にも現れない存在だろうか?
「あの子があそこまで人を殺せるようになったのは私の責任でもあるの…私はあの子のお母さんを利用した、最低な女だから…」
 幸人の母親がいるかもしれないのならここまで自分に接触し、知沙と愛を深め合っている理由も頷ける。それでもあの男が快楽拷問の前では無力であったことが一番の驚きだ。
「これから幸人君がどう動くかわからないけど、敵はもう一ついるわ…」
「敵ですか?」
「真美、この前海外マフィアとやらに襲われたでしょ?」
「はい。幸人の家を飛び出したときに」
「それがここ最近勢力を拡大してる。けど海外マフィアといえ私たちに固執して襲う理由を考えてたの…おそらくお互い因縁の関係かもしれないわ」
 マフィアが真美を狙う理由は確かに臓器や身体そのものを売る目的、つまり金目当ての理由は一つある。実際彼女たちに殺された卓郎は珠水鳳凰の傘下にあたるマフィアに金を借りると同時、その返せなくなった借金を返す条件としてヤクを売り捌くなどの犯罪を犯していた。彼女は全く知らなかった事実だが、DVクズ男だけじゃなく正真正銘の犯罪者が旦那だったのだ。そう考えると犯罪者を「拷問」によって殺しただけになるが、自分なりの正義は貫いたつもりだ。
「幸人君が敵になるか味方になるかは私にはわからない…けど、あの子を愛したいならそれは自由だし、そのときは私より幸人君を優先しな?」
 とはいっても幸人には知沙がいる…それに明美が言う言葉には何か裏なのか子供を想うような意志が感じられる。彼女は少し間を置いてからビールを飲み干した。

 あの快楽拷問から数時間後、既に陽は沈みきって夜になっていた。どうにか意識を取り戻した幸人だが一向に口は開かず、ひたすら天井だけを眺めてボーっとしている。知沙も疲れから寝そうになった頃…
「知沙…さん…」
「幸人君…!?」
 やっと口を開いて発した言葉が何と自分の名前だった。思わず彼の性器を見るが…やっぱりもう勃っていない…彼の気持ち良いまま奉仕したことに対する満足感、真美含む他の女性に奉仕してもらったという嫉妬心、そして意識が飛んでしまうほどにやりすぎた罪悪感など、彼女の心は既にパンクしかけていた。
「幸人君が私の所有物じゃないことはわかってる…けど今のあなたは女たちの下僕よ…立場はわかってるわね?」
「………」
 敢えて話さないのかそれとも脱力感で話せないのかがわからない。
「この前私が言った約束って、覚えてる?」
「………」
 質問にも答えないか…そのとき
 パチン!
「寝たフリはもういい加減にして!」
「…!?」
 一気に彼の左頬が赤くなった。
「私が幸人君のお母さんになるって言ったでしょ!」
「お母さんになるって具体的に何ですか…?僕を気持ち良くしただけじゃないんですか…?」
「それは…私は従わなければ生きれないからよ…だけど幸人君との関係は別よ!そう思ったのに…あの人はあなたを快楽沼に落とせと命令したのよ!」
「快楽沼…それで何人落としたんですか?」
「私はあなたを入れて4人よ…だけどあなたを抱いてるとき、お互い気持ち良くなってるときがどれだけ幸せかって…」
 今日に至るまで4人の男を快楽沼に落としてきたが、彼女にとって一生抱いていたい人は水瀬幸人だった。
「それなら僕にお母さんらしいことしてくださいよ…」
「…何してほしいの?また中に出したいの…?」
「違います…僕は母乳を飲まず育ったそうです…」
「そうなの…?それで母乳がどうしたのよ?」
「飲みたいです…」
 !?子供を生んでもう16年経っている。確かに授乳して翔星を育てたがそれは昔の話だ。母乳が出なくても取り敢えずおっぱいを出して吸わせればいいのか?彼女は着ているワンピースを脱いでブラジャーのホックを外す。そしてたわわな胸が露わになり
「ほらっ…」
 彼女は口元に乳房が当たるような位置に持っていくと
 ペロペロ…
「ゥゥ…」
 彼は赤ん坊のように夢中で乳房に吸いつく。彼女も性感帯を舐められ吸われて気持ち良くなる。だがそのとき!
「痛いッ!?何すんの!やめなさい…!」
 何と彼は右乳房を噛み千切るような勢いで噛みついている!離らかそうにも力が強すぎて歯が食い込み痛みの方が増す!
「やめなさい…!幸人君ッ!」
 パチン!
「痛いじゃない!?」
 乳房は噛み千切られていないが歯型がくっきり残っていて血が出ている。
「息子さんだって痛かったんじゃないですか?さっきまで僕も痛かったんですよ…」
「今翔星の話は関係ないでしょ!…」
「知沙さんは今乳首を噛まれて痛かった…僕は永遠に続くかもしれない快楽拷問が怖かった…」
 彼は痛くて怖かった想いを切実に語る。
「…ごめんね幸人君…私が一番…人に痛い思いをさせていたんだった…」
 彼女は暴力から逃れるため咄嗟に旦那を刺し殺し、翔星に見られたことを不都合と見なして我が子まで殺してしまった。そんな彼女は乳房を噛み切られるかもしれない辛い痛みを感じてどれだけ自分が人を傷つけてきたのかを思い知る。すると彼は
 ギュッ…
「知沙さんがお母さんなら僕は息子ですか?でも…同じように殺そうなんて考えないでくださいね?」
「当たり前じゃん…今日からあなたのママは私よ!」
 本当の親子ならやってはいけないが2人は愛を深め合ってキスを交わす。彼は高ぶる感情を少し抑えようと近くに酒がないか探すと
「ワインでも飲む?」
「いただきます」
 ベットから少し離れたテーブルにはクーラーで冷やされていたワインが。彼女はお酒が飲めない体質だ。飲むのは一人だけなのでワイングラスは一つだけだが
「ねぇ…今日はあなたの口移しで私を酔わせてくれる?」
 20歳になってお酒を飲んでみたが彼女はすぐに酔ってそれ以降飲めなかった。久しぶりに愛している彼の口移しで今日は思う存分酔ってとろけたい…
「勿論ですよ…」
 彼はグラスいっぱいに注がれたワインを口に含んで彼女の口に目一杯移した。そして…
 ゴク…
「はぁ〜…やっぱり、お酒は何飲んでもキツイわね…」
 やはり彼女はこの一口で酔ってしまった。彼女の酔い潰れる目は女性らしく可愛らしいが、母のような優しい目も見える。同時に息子を殺してしまった罪悪感、そして今母親代わりになる決意が感じられる。このまま母親に会えなくてもいいと思っていた。何故なら、知沙という母親代わりで愛する人が傍にいるのだから。