星の花が降るころに①

                           
学校からの帰り、少し回り道をして銀木犀のある公園に立ち寄った。
                               
銀木犀は常緑樹だから一年中葉っぱがしげっている。それをきれいに丸く刈り込むので、木の下に入れば丸屋根の部屋のようだ。

夏実と私はここが大好きで、二人だけの秘密基地と決めていた。

ここにいれば大丈夫、どんなことからも木が守ってくれる。そう信じていられた。

夕方に近くなっても日差しはまだ強い。木の下は陰になって涼しかった。

掃除をしているおばさんが、草むしりの手を休めて話しかけてきた。

「いい木だよねえ、こんな時期は木陰になってくれて。けど春先は、葉っぱが落ちて案外厄介なんだよ、掃除がさ。」

私は首をかしげた。常緑樹は一年中葉っぱがしげっているはずなのに。

「え、葉っぱはずっと落ちないんじゃないですか。」

「まさか。どんどん古い葉っぱを落っことして、その代わりに新しい葉っぱを生やすんだよ。そりゃそうさ。でなきゃあんた、いくら木だって生きていけないよ。」

帽子の中の顔は暗くてよくわからなかったけど、笑った歯だけは白く見えた。

おばさんはよいしょと言って掃除道具を抱えると、公園の反対側に歩いて行った。

私は真下に立って銀木犀の木を見上げた。

かたむいた()が葉っぱの間からちらちらと差し、半円球の(そら)にまたたく星みたいに光っていた。

ポケットからビニール袋を取り出した。花弁は小さく縮んで、もう色がすっかりあせている。

袋の口を開けて、星形の花を土の上にぱらぱらと落とした。

ここでいつか夏実と花を拾える日が来るかもしれない。それとも違うだれかと拾うかもしれない。あるいはそんなことはもうしないかもしれない。

どちらだっていい。大丈夫、きっと何とかやっていける。

私は銀木犀の木の下をくぐって出た。