星の花が降るころに①


「おかえり、戸部君」

私は久しぶりに仕事帰りの夫を苗字で呼んでみた。

「愛都も戸部だろ。」

ネクタイを緩めながら苦笑する夫が主人(あるじ)を見つけたイヌのように瞳を輝かせた。

「あ、今日カレー?」

「うん。」

「よっしゃー!早く食べるぞー!!」

私の夫は、見た目や声は16年前よりも遥かに大人になっているけど内面はほとんど変わらない。

――まあ、そういうところが好きだけど。

「お父さん、うるさいよ。カレーがうれしいのはわかるけど」

いつの間にか私の後ろに立っていた夏凜があきれたように笑う。

「はい、すみません」

娘に注意されて、あっという間にしおらしくなってしまった夫が水色のワイシャツを脱いで洗濯かごに服を放り込む。

「とりあえず食べよ。夏凜、ご飯盛りつけといて」

キッチンに戻って、私は皿にカレーを盛り付ける。

「「「いただきまーす!」」」

家族と食べるいつものカレーは、今日だけはなぜかいつもよりもおいしかった。



fin.