星の花が降るころに①


外には雪がちらついていて、濃い紺色の空に白い雪がよく映えていた。

「こっち。」

寒空の下、十数分歩いてたどり着いたのは、銀木犀のあるあの公園だった。

「はい。」

手頃なベンチに座り、戸部君が差し出したのは、白地に小さな黒い文字があしらわれた10㎝四方ほどの小さな紙袋だった。

「中身、見ていい?」

「いいよ。」

寒さのせいか、はたまた別の理由か、戸部君の耳と頬はほんのり赤かった。

紙袋の中身をのぞくと、透明の瓶に紺色の液体が入っていた。

銀色の蓋を開けて手首に液体を噴射すると、澄んだ秋の朝のような爽やかで上品な香りが立ちのぼった。

「銀木犀…」

「メッセージカードも入ってるから、ゆっくり見て。またな、愛都」

そういって戸部君はベンチから立ち上がり、先に公園から出て行ってしまった。

追いかける間もなくベンチに取り残された私は、立ち上がることもなく紙袋をひっくり返した。

中心に金色のホログラムで『Always With You』と書かれた白いメッセージカードが膝にはらりと落ちてきた。裏返すと、シンプルなメッセージ。

『花言葉調べてみて。』

「はぁ!?」

てっきりラブレターかと思って見てみると、なんだこれ。思わず私は住宅街のど真ん中の公園で奇声を上げてしまった。

やばい、と反射的にあたりを振り返ったけど、誰もいなかった。

私はほっと息をついて、カバンから取り出したスマホで『銀木犀 花言葉』と検索した。

AIによる概要のところに、『銀木犀の花言葉は、「初恋」「高潔」「あなたの気を引く」です。これらの花言葉は、白い花が持つ清らかなイメージや、中国の昔の風習に由来するといわれています。 』と書かれていた。

あまりにも恋愛チックな花言葉が出てきて、また私は驚愕する。

「初恋…?ん、初恋⁉」

戸部君が私のことをそんなふうに思っているなんで意外だった。

でも、そう考えると中学生の時の疑問――なんで戸部君は私にからんでくるのか――という疑問が氷解する。

中学1年生の9月、夏実と仲直りできなかった時も彼は私のことを見ていたし、部活途中の彼が話しかけてきて、『あたかもしれない』と言って、傷心の私を不器用に慰めてくれた理由も氷解した。

それと同時に、思わず笑いが込み上げてきた。

――やっぱり、戸部君ってわけがわからない。