「愛都、ひさしぶり。」
私の記憶にある声よりもずっと大人びた声に呼ばれて振り向くと、スーツ姿の戸部君がいた。
「ひさしぶり…」
同窓会に遅れないように全力疾走したせいで、息が切れていた。
ぐちゃぐちゃに乱れた髪型を手ぐしで整えながら、彼の顔をじっと見つめる。
中学生のころ、戸部君と真正面から向き合ったあの日よりもずっと背が高くなっていて顔をあげないと彼の顔は見えないほどだった。
「愛都、先行ってるね」
夏実が短い黒髪を揺らしながら中学の同級生たちの中に溶けていく。
夏実がいなくなり、私は必然的に戸部君と向き合うことになる。
どのくらい長く見つめ合っていたのかはわからないけど、少したってから戸部君がふと口を開いた。
「なあ、愛都…」
彼は何かを言いかけたけど、夏実がそれを押しつぶすかのように「愛都ー!」とよく通る声で私を呼んだ。
「夏実が呼んでるから、またね」
私がそう言って踵を返すと、誰かに手首をつかまれた。
「同窓会終わってから、話したいことがある。駅の雑貨屋で待ってて」
振り向くと、いつになく真剣な表情をした戸部君が私の瞳を見ていた。
「わかった。」
私は戸部君にそれだけを返事して、夏実のもとに走った。



