一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

「や、なに言ってんのかな!? ごめん! この前から私、なんかちょっといろいろアレすぎる。吉見さんに変なことばっかり言っているよね」

 いくらなんでも、気を抜きすぎなんだってば。
 この前は酔っていて。今回は、自宅の上ゆるい格好で。

「こんな感じなら、結婚しても楽しそうだな」
「や、ノってくれなくていいから。おまえと新婚なんて吐く、くらいのことは言ってくれていいから」
「言わないけど。陽彩、この前から俺の話聞いていないだろ」
「んなことないよ」
「だったら、鈍いんだな」
「鈍くないよ。鈍いのは吉見さんのほうだよ」

 こんなに至近距離で、吉見さんの息遣いを感じるだけで、私の心臓は暴れっぱなしなのに。
 さっきもらった言葉のせいで、慎重にならないとっていう決意がとっくに揺らいでいるのに。
 そのせいで顔なんて火が出そうで、声だって自分でも驚くほど女っぽくて、ぜんぜん職場とは違うのに。
 それに気づいていないとしたら鈍すぎる。そう思ったら、伝えたい衝動が喉元までせり上がった。
 知ってよ、私が吉見さんを。君を。
 ――好きなこと。

「吉……」
「俺、今日ここに来たのには理由があって」

 あともう少しで言葉が滑り落ちるというとき、吉見さんがため息をついた気配がした。
 肩透かしを食らった気分になったけど、セーブがかかって助かった。でも、なんだろう。
 私は首を捻って吉見さんを見あげる。
 わずかに熱を帯びた目が私を見おろした。

「付き合ってほしい、って陽彩に言う気で来た」
「つ」

 復唱しかけて、あとが続かなくなった。つ、付き……? なにに、とは聞くだけ野暮だけれども。
 信じられなくて、目をまたたく。頬がかあっと熱くなる。

「え、えっと」

 固まっている私の代わりに、吉見さんが淡々とシンクに落ちた小鉢を拾って洗い直す。