翌日、土曜の昼近く。手には、スマホと吉見さんが名刺の裏に書きつけたメモ。
私はさっきから、電話をかけようとしては踏ん切りがつかずに、狭いリビングを行ったり来たりしていた。
『これ、俺の番号。週末、電話して』
昨夜の別れ際だった。なんで、と尋ねるまもなく渡されたのだ。
これ、きっとプライベートの番号だと思う。これまでは、社用のスマホで連絡を取り合っていたけれど。
わけもなく床に正座する。
なにせ、ダメなところばかり見せている。酔っ払って送ってもらったなんて、二度目ともなると言い訳のしようもない。
自己嫌悪が波のように襲ってくる。
これから謝罪会見に臨む社長さながらの覚悟で、私はおそるおそる番号をタップした。
「お……おはよう。昨日は送ってくれてありがとう」
開口一番、挨拶もそこそこにお礼と謝罪をする。吉見さんが電話口で小さく笑った。
『二日酔いは?』
「おかげさまで、それはないかな。今日はさっぱり爽快、元気」
『そ。よかった。それが聞きたかった』
電話口の吉見さんの声は、職場で聞くよりも穏やかに耳に染みこんでくる。
十二月の真冬でも、暖炉の前にいるみたい。心がほのかにあたためられていく。
「だから、電話しろって言ったの?」
『ん。俺、来週は出張で事務所に出ないから。陽彩が体調崩しても気づかないだろ。今日ならなんかあっても、対処してやれるから』
待って。吉見さんの優しさが半端ない。これって、もはや同僚を超えて恋人の領域では……。
「いやいやいや」
頭があらぬ方向へトリップしかけ、私は自分で自分にストップをかける。
なにを浮ついているの、私。
ちょっと吉見さんが優しくしてくれているからって、うっかり飛びついて痛い目に遭ったら立ち直れない。
私はさっきから、電話をかけようとしては踏ん切りがつかずに、狭いリビングを行ったり来たりしていた。
『これ、俺の番号。週末、電話して』
昨夜の別れ際だった。なんで、と尋ねるまもなく渡されたのだ。
これ、きっとプライベートの番号だと思う。これまでは、社用のスマホで連絡を取り合っていたけれど。
わけもなく床に正座する。
なにせ、ダメなところばかり見せている。酔っ払って送ってもらったなんて、二度目ともなると言い訳のしようもない。
自己嫌悪が波のように襲ってくる。
これから謝罪会見に臨む社長さながらの覚悟で、私はおそるおそる番号をタップした。
「お……おはよう。昨日は送ってくれてありがとう」
開口一番、挨拶もそこそこにお礼と謝罪をする。吉見さんが電話口で小さく笑った。
『二日酔いは?』
「おかげさまで、それはないかな。今日はさっぱり爽快、元気」
『そ。よかった。それが聞きたかった』
電話口の吉見さんの声は、職場で聞くよりも穏やかに耳に染みこんでくる。
十二月の真冬でも、暖炉の前にいるみたい。心がほのかにあたためられていく。
「だから、電話しろって言ったの?」
『ん。俺、来週は出張で事務所に出ないから。陽彩が体調崩しても気づかないだろ。今日ならなんかあっても、対処してやれるから』
待って。吉見さんの優しさが半端ない。これって、もはや同僚を超えて恋人の領域では……。
「いやいやいや」
頭があらぬ方向へトリップしかけ、私は自分で自分にストップをかける。
なにを浮ついているの、私。
ちょっと吉見さんが優しくしてくれているからって、うっかり飛びついて痛い目に遭ったら立ち直れない。



