それからは、部長クラスの面々にル・ポワンの件を労われながらお酒を注いだり、総務に呼ばれて社内報に載せる記事を依頼されたり。
はたまた入所一、二年目である新人の子たちに先輩風を吹かせたり。
花畑を飛ぶ蝶のごとく、あちらこちらの席を回るうちに、時間が過ぎていく。
けっきょく最後まで吉見さんと話をする機会は訪れないまま、忘年会はお開きとなった。
ライトアップされた店を出ると、東京らしいどこか鈍い色の夜が広がっていた。
星はごく少ないものの、人工的なライトの下で同僚たちが浮き立っている光景を見るのは悪くないと思う。
設計部のメンバーの輪のほうは、見ないようにしたけれど。
二次会に行くメンバーを募る明るい声を背に、私は明るい笑顔を貼りつけた。
「今日はこれで失礼します。お疲れさまでした!」
「お疲れー、気ぃつけて帰れよー」
営業部長の陽気な声を聞きながら歩き出す。手元の腕時計を見れば、夜九時。さてどうしよう。
ビールも、野生味あふれる肉料理や新鮮な野菜を豪快にグリルした料理もどれも美味しかったけれど、ほとんど食べられなかった。
職場のひとたちは皆、若い女性といえば花梨ちゃんと同程度の食事量なんだろうと思っている節がある。
花梨ちゃんも本心から「もう食べられない」と嘆いて取り分けられた料理を残すものだから、よけいに。
花梨ちゃんがあざとかわいい系の女子だったら、まだ私も心の内で悪口なんか叩いて溜飲を下げられたのに。花梨ちゃんはこれが素なので、打ちのめされるばかり。
それはさておき、私の腹事情はいまかなり切実なことになっている。
そう、さっきからぐぅぐぅと鳴り続けているんだよね……!
これでは電車に乗れない。どこかに寄るか、コンビニでなにか食べるものを買わないと――。
はたまた入所一、二年目である新人の子たちに先輩風を吹かせたり。
花畑を飛ぶ蝶のごとく、あちらこちらの席を回るうちに、時間が過ぎていく。
けっきょく最後まで吉見さんと話をする機会は訪れないまま、忘年会はお開きとなった。
ライトアップされた店を出ると、東京らしいどこか鈍い色の夜が広がっていた。
星はごく少ないものの、人工的なライトの下で同僚たちが浮き立っている光景を見るのは悪くないと思う。
設計部のメンバーの輪のほうは、見ないようにしたけれど。
二次会に行くメンバーを募る明るい声を背に、私は明るい笑顔を貼りつけた。
「今日はこれで失礼します。お疲れさまでした!」
「お疲れー、気ぃつけて帰れよー」
営業部長の陽気な声を聞きながら歩き出す。手元の腕時計を見れば、夜九時。さてどうしよう。
ビールも、野生味あふれる肉料理や新鮮な野菜を豪快にグリルした料理もどれも美味しかったけれど、ほとんど食べられなかった。
職場のひとたちは皆、若い女性といえば花梨ちゃんと同程度の食事量なんだろうと思っている節がある。
花梨ちゃんも本心から「もう食べられない」と嘆いて取り分けられた料理を残すものだから、よけいに。
花梨ちゃんがあざとかわいい系の女子だったら、まだ私も心の内で悪口なんか叩いて溜飲を下げられたのに。花梨ちゃんはこれが素なので、打ちのめされるばかり。
それはさておき、私の腹事情はいまかなり切実なことになっている。
そう、さっきからぐぅぐぅと鳴り続けているんだよね……!
これでは電車に乗れない。どこかに寄るか、コンビニでなにか食べるものを買わないと――。



