一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 今日の花梨ちゃんは秋らしい色合いのチェック柄がかわいいワンピースだ。足元はクラシカルなかたちのエナメルパンプス。
 まるで幼いころに遊んだ、人形みたい。細くて、目がぱっちりと大きくていつもお洒落な服を着ているお人形。
 手の中のピアスが、輝きを失っていく。
 つい目を落としていると、花梨ちゃんがいつのまにか覗きこんでいた。

「これ、陽彩さんがよくつけているピアスですね! あれ? 片方だけですか?」
「週末、落としていったからさっき渡したところ」

 私が返事をするより先に、吉見さんが説明する。
 と、花梨ちゃんの顔が強張った。急にどうしたんだろう。けげんに思った私は、次の言葉に仰天した。

「おふたりって、そういう……部屋に行くような……仲だったんですね」




 
 十二月の風が強い日。工事の無事と新設する建物の繁栄を祈る地鎮祭も無事に終わった。
 あとは、いよいよ工事着工するのみ。
 地鎮祭からの帰り道、凍てついた風にコートの中で首をすくめると、ぼやきが漏れた。

「私の仕事はほとんど終わっちゃったなぁ……」

 建築士は、着工後も図面どおりに施工されているか定期的なチェックのために現地を訪れる機会がある。
 けれど営業は、よほどの問題が起きない限り工事そのものに関わる機会はない。
 あとは無事に竣工されたら、クライアントへの引き渡しに立ち会うくらい。
 つまりは、吉見さんと一緒に行動するのもあとわずか。

「感傷にふけっても得るものはないだろ。次の客を引っ張れ」
「そう言われると耳に痛いなぁ。でも、ル・ポワンのおかげでまた新しい契約が取れそう」

 ル・ポワンの設計デザインがクライアントに大層好評だったおかげで、同業種から何件か問い合わせをもらっているのだ。
 廣瀬さんからの紹介らしい。ありがたい。