吉見さんの言うことはもっともだ。
ふだんから同僚には愛称で通っているというのに、それが名前に変わっただけで、なにをドキッとしているんだか。
自分の感情に気づいてから、ささいな変化にもいちいち大げさに反応してしまっている。まずいなぁ。
それは私が、異性に触れる行為を特別視しているからで、世間一般には……ううん、少なくとも吉見さんには当てはまらないようだ。
「じゃあ、えっと、そろそろ二階に戻るね?」
「っと、待って」
帰ろうと背を向けたとたん、吉見さんにふたたび手をつかまれた。無造作だからタチが悪い。
吉見さんは私をつかまえておいて、ジャケットの内ポケットに手を入れた。
「はい、これ。落としただろ」
「そう! 拾ってくれていたの? よかったぁ。今から拾いにいっても見つからないだろうなって、諦めかけていたの。ありがとう」
星のかたちをした石がぶら下がったピアスを、私はそっと受け取る。
西田に遭遇したとき、落としたもの。
あのあと、西田とのアレコレや吉見さんを出待ちしたりで、拾いそびれたまま帰ってしまったのだった。
高価なものでも、特別なものでもない。けれど気に入ってつけていただけに、帰宅して気づいたときは落ちこんだっけ。
手の中で、星がきらきら輝いている。私にはそれがなにか特別な輝きのように思えて、そっと指先でピアスを撫でた。それからお礼に食事でも、と切り出しかけた私は途中で口を閉じた。
「吉見さん、お疲れ様です! 頼まれた図面、できましたよ。超特急で頑張ったんですからね? 約束どおり、ご飯行ってくださーい!」
吉見さんに駆け寄った花梨ちゃんが、私に気づいてVサインを送ってくる。これはどういう意味だろう。ひょっとして、吉見さんとデ……ご飯に行くから?
そうだ、花梨ちゃんは吉見さんにアプローチするって言っていたんだった。
ふだんから同僚には愛称で通っているというのに、それが名前に変わっただけで、なにをドキッとしているんだか。
自分の感情に気づいてから、ささいな変化にもいちいち大げさに反応してしまっている。まずいなぁ。
それは私が、異性に触れる行為を特別視しているからで、世間一般には……ううん、少なくとも吉見さんには当てはまらないようだ。
「じゃあ、えっと、そろそろ二階に戻るね?」
「っと、待って」
帰ろうと背を向けたとたん、吉見さんにふたたび手をつかまれた。無造作だからタチが悪い。
吉見さんは私をつかまえておいて、ジャケットの内ポケットに手を入れた。
「はい、これ。落としただろ」
「そう! 拾ってくれていたの? よかったぁ。今から拾いにいっても見つからないだろうなって、諦めかけていたの。ありがとう」
星のかたちをした石がぶら下がったピアスを、私はそっと受け取る。
西田に遭遇したとき、落としたもの。
あのあと、西田とのアレコレや吉見さんを出待ちしたりで、拾いそびれたまま帰ってしまったのだった。
高価なものでも、特別なものでもない。けれど気に入ってつけていただけに、帰宅して気づいたときは落ちこんだっけ。
手の中で、星がきらきら輝いている。私にはそれがなにか特別な輝きのように思えて、そっと指先でピアスを撫でた。それからお礼に食事でも、と切り出しかけた私は途中で口を閉じた。
「吉見さん、お疲れ様です! 頼まれた図面、できましたよ。超特急で頑張ったんですからね? 約束どおり、ご飯行ってくださーい!」
吉見さんに駆け寄った花梨ちゃんが、私に気づいてVサインを送ってくる。これはどういう意味だろう。ひょっとして、吉見さんとデ……ご飯に行くから?
そうだ、花梨ちゃんは吉見さんにアプローチするって言っていたんだった。



