一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 ル・ポワンへの再提案で行き詰まっていた吉見さんに、アドバイスをお願いしてからだいぶ経つ。
 どうしても顔を見てお礼を言いたくて、タイミングをうかがっていたのだ。

「はーい。大日出身の優秀な建築士にアドバイスなんて、緊張したよー。でも彼、意外に謙虚で驚いたよ」
「とっつきにくい雰囲気ありましたもんね。でも、意外と話もしやすくて、めちゃめちゃ頼りにさせてもらってます」
「ほおー。で、おひよちゃんは彼と実際どうなの? 前に吉見くんとここで話してたとき、あったでしょ。あのときから、仲がいいなあと思ってたんだよね」

 柳さんが、椅子をくるりと私のほうに回しながら、笑顔でとんでもないことをぶっ込んできた。
 うわぁ、思い出した。ラフ案の採用を吉見さんに伝えたとき、なんか設計のひとたちの生あたたかい視線を感じると思ったんだ。
 あのときから、色恋を期待した目で見られていたってこと? それはいたたまれない。とってもいたたまれない。
 目をあらぬほうへ逸らしたら、逸らした先で別の部員と目が合う。あれ?
 生あたたかい目で見ていたのは、柳さんだけじゃなかったようだ。

「皆さん、そんなふうに見ていたんですか。仕事してくださいよ……」
「だって、ねえ。おひよちゃんがかわいーんだもん」
「だもん、じゃないですよ。そういう勘ぐりはやめましょう? 一歩間違えたらセクハラ案件ですし、まず吉見さんに失礼ですよ」

 うちの事務所はアットホームで、そこがいいところでもあるけれど。
 これじゃあ、プライバシーなんてあってないようなもの。
 なんて恐ろしい。アットホームだとほのぼの言っていられるのも、時と場合による。

「おっと、ごめんごめん。でもさ、おひよちゃん――」
「陽彩、なにしてんの」

 耳のすぐ近くでささやかれた低音ヴォイスに、心臓が跳ねあがった。