一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 私の剣幕に、吉見さんが気圧された顔をする。かと思うと、小さく笑ってソファに腰を下ろした。

「落ち着けって」
「落ち着いてらんないって」
「いいから。座って」

 吉見さんが自分のマグカップをテーブルに置き、空いた手で座面を軽く叩いた。しかたなく私も座る。

「よくそこまでひとのことで怒れるな」
「だって悔しいじゃない。吉見さんは、大事な仲間なんだよ。大日のやつらには思いっきり後悔してもらわないと」
「……ありがとうな」

 憤然としていた私は、唐突な言葉の意味がわからなくて目をまたたいた。
 吉見さんが私のほうに向き直る。
 この目、また胸がぎゅっとなるやつだ。胸の深いところにそっと触れてくるような、優しさを湛えたまなざし。
 吸いこまれそう。

「話したら、すっきりした。誰に理解されなくてもいいと思っていたけど、ほんとうは理解してほしかったのかもな」
「や、そんな他人事みたいな感想はいいから、今すぐ――」

 ぐうぅ。
 顔が強張った。羞恥が頬へとみるみる駆け昇っていく。ぐう。
 説明するまでもない音。こんなときに……!

「う、ごめん、実は夕食を食べそびれていて」
「それを早く言えって。なんか食おう」

 また、さっきとおなじ笑顔で、こつんと頭を軽く叩かれたとたん。
 丸腰の心が、目の前のひとに向かって勝手に走り出した。



 
 週が明けて月曜日。別件で三階の設計部を訪れると、吉見さんは不在にしているようだった。
 顔を見れなくて、ほっとするような残念なような。妙な気持ちだ。
 さすがにここまでくると、その気持ちの理由に見当もつく。
 けれど、まだそれを言葉にする勇気はなくて。
 っと、また思考が逸れかけた。仕事仕事。
 私は、目当ての人物がフリーアドレスの席の真ん中に陣取っているのを見つけて駆け寄った。

「柳さん、遅くなりましたけど、先日はアドバイスをありがとうございました」