一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 私は棚を行ったりきたりしながら、親子丼にしゃけと梅のおにぎり、ひじきの入った大根サラダにポテトサラダをカゴに入れていく。ああ、至福のとき。
 おっと、四種類のチーズがたっぷり乗ったパンと、メロンパンも忘れない。
 フィニッシュは、あんことホイップクリーム入りのクレープと、苺味のプリン。
 最後にレジでアイスカフェラテを注文して会計を済ませ、コーヒーマシンでカフェラテを作る。
 心はすでに、それらを口に運ぶ瞬間へ羽ばたいている。
 花梨ちゃんは、もう退社しているはず。
 あとの女性社員はこの時間に更衣室を利用しないから、事務所に戻ったら更衣室でこっそり食べよう。
 でないと、残業どころかあと五分も働けない!
 ふふふ、なにを隠そう、この私こと目白陽彩は、実は大食いだ。
 少食? 慎ましい? いやそれ誰のことですか? 
 なんと言っても、私は食べるのが好き。
 朝起きたら、まずなにを食べようか考える。昼食を食べながら、夕食はなににしようか考えている。
 考えているときがとっても幸せ。食べているときはもっと幸せ。
 小さなころから、両親は私にあれもこれも食べさせたがった。
 私が大きな口で頬張ると喜んだ。両親は自分の分も率先して私の皿に乗せてくれるようになった。
 だからと言ってグルメだとか、舌が肥えたとかいうことはない。屋台の焼きそばも、高級フレンチも、等しく美味しく頂ける。
 とにかく、そんな英才教育のおかげで、私は三食のご飯がなにより幸せな子どもに育った。
 必然的に、胃袋も平均的なサイズより膨張したと思われる。
 結果的に、成人女性の食べる量では絶対的に足りない、わがままな胃が出来上がったというわけ。

 めでたしめでたし。で終われば、どんなによかったか。