ふたりで食事に行ったりもするのかな。

「陽彩さん、一緒にお客様のところに行ったりしてるんですよね。いいなあ。吉見さん、どんな感じですか?」
「う、うん、いいひとだよ。実はけっこう気遣ってくれるし」
「やっぱり! 思いきって、行ってみようかな。恋人いるのかな、吉見さん」
「へ!? って……わぁ!?」

 口に入れかけたミートボールを取り落としてしまった。
 着地したのはお弁当箱の中だったから、セーフ。でも、なぜか変な動悸が収まらない。

「陽彩さんは、吉見さんに恋人がいるかどうかご存じですか?」
「ええっと……、いないって言ってたかも」
「やった、チャンス!」

 まだ謎の動悸に胸を押さえる私をよそに、花梨ちゃんは小さな口でベーグルに歯を立てる。華奢だなぁ。
 女の私でも腕を回せばすっぽり収められそうな薄い肩に、抱きしめたら折れそうに細い腰。守ってあげたくなる。
 きっと、吉見さんから見てもかわいいのに違いない。
 花梨ちゃんと吉見さんが、一緒にご飯を食べているところを想像する。うん、お似合いだ。でも、あれ?
 なんか。なんだか……もやっときた。
 え、なんで?

「ベーグルって思ったよりずっしりきますね。もうお腹いっぱい……!」

 困惑する私をよそに、花梨ちゃんが淡いピンクのネイルすら抜群にかわいい指先で髪をくるくるさせながら、屈託なく笑った。