お食事系からデザート系までなんでもござれ。デザート系だけでも、甘さ控えめから胃もたれ確実なものまで網羅されている。
 ベーコンとバターが渾然一体と輝くパンケーキは、フレッシュサラダも添えられていてバリ島辺りの朝食かと思うほどお洒落。
 ホイップクリームの新雪の上で輝くフルーツだって、どれも宝石のよう。
 ページを行きつ戻りつしても、ひとつに絞りきれない。
 うんうん悩んでいると、吉見さんが拳を口元に当ててひっそりと笑っていた。
 とたんに、真剣になりすぎたのが恥ずかしくなった。

「う、そんなにじっと見なくても。吉見さんはどれにする?」
「俺はコーヒー。目白さんは気にせず食べて」

 でもデートならいざ知らず、仕事の帰りかつ同僚の前で、私ひとりだけがつがつするのはどうなんだろう。

「食べたかったんだろ。そのために入ったから、思いきり食べてくれたほうが助かる」

 え? と返しかけて私は吉見さんの横顔を盗み見た。
 シャープな輪郭が、こころなしかいつもよりやわらかい。なぜなんだろう。
 物珍しそうにメニューを眺める目には隠れた優しさが浮かんで、睫毛の繊細な影が落ちている。
 きれいだな、と思った。
 自分も喉が渇いたからなんて言っていたけれど、あれは口実だったんだ。
 私が気兼ねなく店に入れるように。
 



 クリームチーズとスモークサーモンを挟んだベーグルに、ライムジュースのプラカップ。
 花梨ちゃんの昼食は、今日も驚くほど少ない。
 思わずそう感嘆のため息を漏らしたら、花梨ちゃんが笑って私のお弁当を指した。

「陽彩さんだっておなじじゃないですか~」
「そっか。おなじかあ」

 私は例によって両手に収まるほどの大きさのお弁当箱をつついた。