一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 まあ、日本有数の大手設計事務所からの転職組だというし、彼が手がけるのはショッピングモールなどの大型商業施設のはず。
 小規模な店舗を主に担当する営二のメンバーが、一緒に仕事をする機会はきっとない。
 関係ないよね、と思っているとまたお腹が鳴って、私はとっさにお腹をきつく押さえた。
 


 午後五時半。定時になったのをたしかめると、私は隣の席の先輩に声をかけて事務所を出た。
 財布とスマホだけを持って出たものの、上着を羽織ってきたほうがよかったかもしれない。
 春の風に髪がなびき、私は肌寒さに首をすくめる。
 事務所の入っているオフィスビルを出るとそこはもう大通りで、片側二車線の車道は今日も往来が激しい。
 通りを歩く人々が皆、新宿御苑に向かうように見えるのは、お花見のシーズンだからかな。
 お花見という言葉で今日のお弁当が浮かび、私はその残像をふり払う。
 徒歩三分とかからないコンビニを素通りし、道を渡った反対側の交差点にあるコンビニも横目で通り過ぎる。
 通り沿いをさらに徒歩数分いったところにあるコンビニで、ようやく足を止めた。
 ここまで来れば、事務所のひとたちと鉢合わせすることもない。
 よし、と心の内でゴーサインを出して足を踏み入れたとたん、魅惑の楽園が広がった。
 入って奥の棚を迷わず目指す。つややかなお米から、しゃけや明太子や海老天たちがちらちらと私を誘うおにぎりたち。
 その横には、お弁当に丼、パスタにうどん、ラーメンと揃い踏み。私の胃の隙間を埋めるにはこちらだとばかり、大盛りサイズも鎮座している。
 レジ横にはホットスナックが、保温ケースの中から私を手招きしている。
 アメリカンドックに唐揚げ、肉まん。その正面向かいのスイーツコーナーだって負けていない。
 春だからか、苺を使った新商品が燦然(さんぜん)と輝いている。