一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 里緒との買い物中にかかってきた電話は、暇なら来てというものだった。
 友達と会ってるところだと返すと、じゃあそのあとでいいからと。
 そのときはそれで電話を切ったのだけど、用件が気になっていたのが顔に出ていたらしい。
 ランチ後のデザートにする前に、にこにこした里緒から解散を告げられてしまった。
 だからその足で来たわけなんだけど。

「まあ……仕事以外のわけないよね」
「なにが」
「ううん、こっちの話」

 よけいな人付き合いを好まない吉見さんに限って、私的な用で呼び出すわけがない。
 呼び出されたときこそドキッとしたものの、勘違いしなくてよかった。
 さらに詳細な説明を始めた彼に相づちを打ちつつ、私はタブレットを操作する。
 ドリンクバーと、ハムと野菜のサンドイッチ。サンドイッチは吉見さん用だ。
 このままでは吉見さん、またカロリーバーだけになっちゃいそうだしね。
 手を汚さず食べられて、タンパク質もビタミンも摂れるもの。

「あ。よく考えたら、吉見さんから打ち合わせを持ちかけられたのって初めて」
「別に、必要だと思えばする」
「でも休日だよ」

 吉見さんが、あ、という顔をした。

「気づいた?」
「悪い。そうだった。作業を始めたら、そういうの吹っ飛んでた」

 ばつが悪そうにした吉見さんの前に、サンドイッチが運ばれてくる。
 食べてね、と言い置いてドリンクバーでアイスティーを淹れて戻ると、吉見さんがまだ決まり悪げにしていた。

「目白さん、帰っていいよ」
「ここまで呼んでおいて、もう追い出すの?」
「いや、休日まで会社の人間と顔を合わせたくないだろ」
「嫌だったら来ないよ。それに、聞きたいこともあったから」

 そう、せっかくだから聞いてしまおう。
 里緒に約束した手前でもあるし。
 手振りでどうぞと示すと、吉見さんがサンドイッチに手をつける。
 ものを食べる仕草がきれいだなと、前にも思ったことが頭によぎる。