一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 おかげで、私だけがいつまでもあの日のことを引きずっている。
 実はフォローされるほどのことを、やらかしたんじゃないかって。

「ひよちゃんって、お客さんに対してはコミュ力も高くて人当たり抜群なのに、ほんとうはけっこう気にするよね」
「うじうじしてるって言うんでしょ。ちゃんとたしかめる、たしかめるってば! ……今の仕事が落ち着いたらね」

 里緒はおっとりしているけれど、無言の圧が意外と強い。
 将来の旦那様は、尻に敷かれそうだなと思っていることはここだけの秘密だ。

「うん、早く吉見さんを紹介してね」

 手に取ったマイセンのティーカップを、あやうく取り落としそうになった。

「や、吉見さんはただの同僚だよ?」

 そそくさとティーカップを元の棚に戻す。
 里緒が素朴な蔦模様の入ったシュガーポットを手に取りつつ、カウンターを放ってきた。

「休日なのに、ただの同僚のことが頭から離れないの?」
「違うって、私自身の行いを反省しているの。里緒の考えるような感じじゃないから」
「そっか」

 里緒が釈然としない顔ながら、わかったと微笑む。一瞬、なぜか冷や汗をかいてしまった。

「でもひよちゃんが、ひよちゃんらしくご飯を食べられる相手ができて、よかった」
「……うん。吉見さんは、いいひとだよ」

 それだけは、自信を持って言える。
 口ではそっけないけれど、串揚げ屋でひとの三倍近く食べた私にも引かず、酔い潰れたあとは部屋まで送ってくれたんだから。
 と、スマホの着信音が鳴った。たった今話題にしたばかりの――。

「吉見さんだ。なんで?」
「もしかしてデートのお誘い? そうだったらわたしは帰るからね! ほら、早く電話出て」

 休日に電話なんて、どうしたんだろう。
 間違ってもデートの誘いのわけはないけれど……と思いつつも、脈が乱れてしまう。
 私は里緒に急かされて電話に出た。