一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 慌ててワンピースを離す。夏の空に映えるコットンの裾が、ハンガーラックでひらりと揺れた。
 本格的な夏を前に夏物がほしいね、と里緒と買い物に来たものの、どうもピンと来るものがない。
 カジュアルもナチュラルも、キレイ系も、いくつもお店を回ったというのに。
 しかたないので、里緒と店を出てぶらつく。
 せっかくの休日。商業施設内は私たちみたいな女友達同士だったり、恋人同士だったりであふれ返っていた。
 里緒がカントリー系の雑貨屋を見つけたので、立ち寄ることにする。入ってみたら、カントリー系というよりヨーロッパのアンティークを扱う店だった。

「吉見さんのこと考えてた?」

 ドキッとして顔を上げると、里緒がにこにこしている。

「う、よくわかっておいでで……っていうか私、あんなふうに酔い潰れたの初めてだったから! どうしよう、呆れられたかなぁ」

 吉見さんと串揚げ屋に行ってから、およそ半月。
 クライアントから新店舗を私たちに任せたいという連絡が来たこともあって、吉見さんは詳細提案に取りかかった。
 施工業者に声をかけ、工事のスケジュールも押さえ始めている。
 私も私で、見積もりや契約書の作成でてんやわんや。
 そんなわけで、お互いに仕事の話だけしかしていないという日々が続いている。という話は里緒に報告済みだ。

「吉見さん、あの日のこともなにも言わないし」

 酔って送ってもらった次の日、残っていた記憶を頼りに吉見さんには平謝りした。
 いくら食べていいと許されたからって、はっちゃけすぎ。
 いたたまれなさと申し訳なさで顔が熱かったけれど、吉見さんはいつもとおなじだった。

『気にしなくていいのに』

 いや、吉見さんが実は優しいってことはわかっているんだけど。
 わかっているんだけど、そっけないというか。
 もっとこう、ひと言ふた言でいいからなにか言ってほしかったなぁ。