一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 クールダウンしないと。

「独り言が漏れただけ、とかね。暴露してやろうっていう気はなかったんじゃないかなぁ。ひよちゃんの話を聞く限り、悪意は感じなかったよ」
「まあ、単純に他人への関心が薄そうだとは思うけど。あ、待って。関心が薄いってことは、そもそも私が大食いだって気づかれていない可能性もある?」
「それはどうかなぁ」

 のんびりとした返事に、私は意気消沈しつつ「ごちそうさま」と手を合わせる。あっというまに食べてしまった。
 久しぶりに外でお腹いっぱい食べられたので、満足感も二百パーセントだ。
 これからちょくちょく来よう。おひとり様で来るときのことを考えると、うかつに職場のひとにもお勧めできないのが難点だけれど。

「気になるなら、いっそ本人にたしかめてみたらどうかな?」
「ええ? 嫌よ。藪を突くことになったらどうするの」
「案外、蛇じゃなくて鷹が出てくるかも。蛇なんかのみこんでくれるよ」

 里緒と別れた事務所への帰り道、脳内で吉見さんに鷹を重ねてみる。
 蛇をのみこむ強さはともかく、爪を隠している可能性はある。
 現地調査も、私が思いつきもしなかった観点からの提案を想定したものだったのだから。
 さすが、大手設計事務所から来ただけある。
 でもやっぱりあとが怖いから、たしかめる勇気はない。
 むしろこのまま忘れてほしい。里緒の提案に今さらながらかぶりを振り、事務所に戻ったら。

「やっと帰ってきた。はいこれ」

 なぜか私が朝陣取った席に、吉見さんが座っている。
 私のノートパソコンは脇に追いやられ、代わりに吉見さんのノートパソコンが資料を映し出していた。
 吉見さんの片手には「カロリー補給+一日の栄養素をこれ一本で!」と書かれたゼリー飲料。

「確認して。設計プラン」

 慌ててパソコンを覗きこんだ私は、思わず唸った。
 これ、かなりいい。