買い物袋の中は、大量のおにぎりにパン、チョコレートにグミなどがぎっしりと詰まっていた。
 ほかにも、大量のコンビニスイーツやホットスナックもある。ひょっとして棚の端から端までぜんぶ買い占めたのでは?

「ほんとかー? 設計のやつが、以前おひよがそれくらい大量に買いこんでいるのを見たことがあるって言ってたぞー」
「うそっ、わざわざ職場から遠いコンビニに行ってたのに!」
「わははは。おひよは、涙ぐましい努力をしていたんだな。これからは食え! 食って、働け!」
「はい!」

 まるで体育会系の部活の先輩後輩みたいな会話をして、落ち着いたのもつかのま。
 その後も差し入れの波は止まらなかった。
 他部署からも差し入れは続き、昼ごろには差し入れの山がかたち作られつつあった。給湯室の冷蔵庫ももう満杯だ。
 そしてランチどき。三階から降りてきた花梨ちゃんにまで――。

「陽彩さん、これ私の気持ちです! 受け取ってください!」

 どう見てもホールケーキ用にしか見えない白い箱を渡され、私はたじろいだ。

「今日は別に誕生日でもなんでもないよ?」
「知ってますよ。でも、あげたかったんだからいいんです! 私、お菓子作りが趣味で、これも手作りしてきました〜。ぜひ食べてください!」

 まるで告白を受けた男子のよう。
 花梨ちゃんが作ってくれたのはシフォンケーキで、耳ざとい先輩たちがわらわらと寄ってくる。
 コンビニの買い物についていたプラスチックフォークで、皆さんにもお裾分けしたら、なぜか大試食会が始まってしまった。
 苦笑いしていたら、それまで集まっていた先輩たちがスーッと引いていった。波が引くように。

「陽彩、昼飯……先輩たち、なにしてるんですか? 柳さんまで」

 ランチに誘いにきてくれたのか、やってきた一希がけげんそうな顔をする。