一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは

 同級生たちからの嘲笑も、付き合ったひとからの幻滅も、今やっとすべて胸の内から洗い流されていく。
 心が軽くなっていく。残ったのは、清々しくて爽やかな気分だけ。
 私は思わず深く息を吸う。
 それもこれもきっかけは、私のままの私を肯定してくれた彼がいたから。
 無意識のうちに、視線が一希の姿を求める。
 彼は料理の並んだテーブル前で、なぜか設計の先輩たちに背中をバンバン叩かれてはよくやったと労われていた。
 一希も満更ではなさそう。周囲をシャットアウトしていた去年の春とは、大違いだなと思う。
 私たち、お互いに変わったのかな。
 だったら少なくとも私が変わったのは、間違いなく一希のおかげだ。
 美味しくたくさん食べることと、一希を好きな気持ちは、これからもきっと変わらないけれど。
 と思ったところで、私はいちばん大事なことを思い出した。
 




 電車を降りて、一希とふたり静かな夜道を歩く。
 ふたり分の足音が揃って響くのは、一希が私に合わせて歩調をゆるめてくれているからだ。
 パーティーは大成功のうちに終わった。
 私は昼間の一件をしみじみと思い返す。
 ひとが変わったように私が食べ始めたのが、なぜか抜群の宣伝効果になったらしい。
 ああいった立食パーティーでは、通常は参加者同士の交流が主体になりがちだ。だけど、今回はル・ポワンの味を参加者全員が堪能するにいたった。
 しかも、その日のうちに予約が殺到したという嬉しいおまけつき。
 ところが思い返して笑った私の横で、一希は少々辟易した様子だ。

「あのひとたち、よくああも他人の恋愛に興味を持てるな……」

 あのひと、とはよくいえばアットホーム? な事務所の皆さんのことだ。
 一希が行弘を完全にやりこめたあと、一希は皆さんに質問責めにされたようだ。