と、浴室の前で吉見さんが足を止めた。私の手をつかんだまま。
「…… 俺、察するのも伝えるのも下手で、陽彩を不満に感じさせていると思う。自分でも直そうとはしているけど、陽彩から来てくれたり言ってくれることに甘えてもいるし。けど、ほんとうに大事だと思っているから」
「……うん」
吉見さんが、私の手をつかむ手に力をこめる。
「先に言っておくけど、無茶したり我慢するのだけはやめて。俺に不満があるときは言って。陽彩のことは、手遅れにしたくないから」
「うん。……吉見さんも。私だって、おなじように思っているんだからね」
心なしか吉見さんの首の裏が赤く見えたけれど、口にするのはやめておいた。
きっと、私のほうがどこもかしこも赤くなっているはずだから。
吉見さんに借りたぶかぶかのカットソーに着替え、私はソファで缶ビールに口をつけた。
ちなみにボトムスも借りたものの、裾を何度も踏んづけそうになって穿くのは断念した。私が行儀悪く膝を抱えているのは、素足を隠すため。
吉見さんの家で、隣に吉見さんがいて、お酒があって。
テーブルにはコンビニで買った惣菜をアレンジしたおつまみも並んでいる。
サラダチキンとカット野菜、ミックスナッツで作ったよだれ鶏。食べるラー油を使うとピリ辛の刺激が癖になってビールが進む進む。
ポテトサラダに刻んだたくあんをまぜて黒胡椒をかけたたくあんサラダは、黒胡椒を親の仇のようにたっぷり振るのが私好み。でも今日は、様子見もかねて控えめに。
鯖缶とマヨネーズを滑らかになるまでまぜた、スティック野菜のバーニャカウダ。こっちは箸休めだから優しい味で。
ほかにもいろいろ買いこんだのはお約束だけれど、そこは割愛。
キッチンを借りて作ったそれらの料理とお酒があれば、仕事の疲労が抜けていく心地がする。
「…… 俺、察するのも伝えるのも下手で、陽彩を不満に感じさせていると思う。自分でも直そうとはしているけど、陽彩から来てくれたり言ってくれることに甘えてもいるし。けど、ほんとうに大事だと思っているから」
「……うん」
吉見さんが、私の手をつかむ手に力をこめる。
「先に言っておくけど、無茶したり我慢するのだけはやめて。俺に不満があるときは言って。陽彩のことは、手遅れにしたくないから」
「うん。……吉見さんも。私だって、おなじように思っているんだからね」
心なしか吉見さんの首の裏が赤く見えたけれど、口にするのはやめておいた。
きっと、私のほうがどこもかしこも赤くなっているはずだから。
吉見さんに借りたぶかぶかのカットソーに着替え、私はソファで缶ビールに口をつけた。
ちなみにボトムスも借りたものの、裾を何度も踏んづけそうになって穿くのは断念した。私が行儀悪く膝を抱えているのは、素足を隠すため。
吉見さんの家で、隣に吉見さんがいて、お酒があって。
テーブルにはコンビニで買った惣菜をアレンジしたおつまみも並んでいる。
サラダチキンとカット野菜、ミックスナッツで作ったよだれ鶏。食べるラー油を使うとピリ辛の刺激が癖になってビールが進む進む。
ポテトサラダに刻んだたくあんをまぜて黒胡椒をかけたたくあんサラダは、黒胡椒を親の仇のようにたっぷり振るのが私好み。でも今日は、様子見もかねて控えめに。
鯖缶とマヨネーズを滑らかになるまでまぜた、スティック野菜のバーニャカウダ。こっちは箸休めだから優しい味で。
ほかにもいろいろ買いこんだのはお約束だけれど、そこは割愛。
キッチンを借りて作ったそれらの料理とお酒があれば、仕事の疲労が抜けていく心地がする。



