私と食事を共にしても「萎えない」と示してほしい。
そうすれば、嫌な気分なんてたちまち吹っ飛ぶのに。
事務所まで戻ると、私はエレベーターを二階ではなく設計部のある三階で降りた。
吉見さんの姿を探して、フロアを見渡す。雲みたいなかたちをした中央のテーブル席にも、窓際のボックス席にも、吉見さんはいない。
顔を見たら、元気になれそうな気がしたのになぁ。
肩を落としていると、花梨ちゃんがご主人を見つけた子犬さながらの笑顔でやってきた。
「陽彩さん、お帰りなさい! 今日は陽彩さんと一緒にお昼食べられなくて、寂しかったです〜」
きゅるんとした目で見られると、よしよしと頭を撫でてあげたくなる。花梨ちゃんは最近、ますます私に懐いてくれている気がする。
花梨ちゃんは私の視線に気づくと、訳知り顔になった。
「吉見さんなら、さっき一度事務所に立ち寄られましたけど、また別の現場に行かれましたよ。伝言しましょうか?」
「や、いいのいいの。急がないから」
それにプライベートの番号に連絡すればいいし、とはもちろん口にしないけれど。
にしても、また現場かぁ。
広島の物件は吉見さんの能力を見こんで持ちこまれた話だけれど、話を聞きつけた大日設計とのコンペになりそうだと聞いている。吉見さんは今、その準備に追われているのだ。
吉見さんは仕事、特に設計業務が山場になってくると、そちらに意識が持っていかれるタイプらしい。
元から多くなかった連絡は最近さらに少なくなり、朝と夜の挨拶しかしていない日もある。
そうなると、私もおなじ職場で業務の想像がつくがゆえに、邪魔しちゃいけないよね、と連絡を控えてしまう。だからここ数日は声を聞くどころか、メッセージすら送っていない。
でも、会いたいなぁ。
私はがっかりしつつ、花梨ちゃんとの話を切りあげて二階に降りる。
そうすれば、嫌な気分なんてたちまち吹っ飛ぶのに。
事務所まで戻ると、私はエレベーターを二階ではなく設計部のある三階で降りた。
吉見さんの姿を探して、フロアを見渡す。雲みたいなかたちをした中央のテーブル席にも、窓際のボックス席にも、吉見さんはいない。
顔を見たら、元気になれそうな気がしたのになぁ。
肩を落としていると、花梨ちゃんがご主人を見つけた子犬さながらの笑顔でやってきた。
「陽彩さん、お帰りなさい! 今日は陽彩さんと一緒にお昼食べられなくて、寂しかったです〜」
きゅるんとした目で見られると、よしよしと頭を撫でてあげたくなる。花梨ちゃんは最近、ますます私に懐いてくれている気がする。
花梨ちゃんは私の視線に気づくと、訳知り顔になった。
「吉見さんなら、さっき一度事務所に立ち寄られましたけど、また別の現場に行かれましたよ。伝言しましょうか?」
「や、いいのいいの。急がないから」
それにプライベートの番号に連絡すればいいし、とはもちろん口にしないけれど。
にしても、また現場かぁ。
広島の物件は吉見さんの能力を見こんで持ちこまれた話だけれど、話を聞きつけた大日設計とのコンペになりそうだと聞いている。吉見さんは今、その準備に追われているのだ。
吉見さんは仕事、特に設計業務が山場になってくると、そちらに意識が持っていかれるタイプらしい。
元から多くなかった連絡は最近さらに少なくなり、朝と夜の挨拶しかしていない日もある。
そうなると、私もおなじ職場で業務の想像がつくがゆえに、邪魔しちゃいけないよね、と連絡を控えてしまう。だからここ数日は声を聞くどころか、メッセージすら送っていない。
でも、会いたいなぁ。
私はがっかりしつつ、花梨ちゃんとの話を切りあげて二階に降りる。



