再会は小さなぬくもりと一緒に

家に戻ると玄関を入った瞬間から、空気が違っていた。

「……落ち着きがないね」
「先程からずっとこうなんじゃ」

祖父が戸惑った顔をしながら、リリーが、リビングを行ったり来たりするのを眺めていた。

尻尾を低くして、時折小さくソワソワと鳴く。

「これ……来るかな」

晴和さんが、私より先に気付いた。
ついに、いよいよあれが、来て決まったのだろう。

まだ始まってもいないのに、ぎゅっと胸が痛い。

「ゲージ、出そっか」
「あ、そうだね」

私達は急いで二階に上がり、押し入れからゲージを引っ張り出した。するとここがいいのか、リリーはゲージの前で鳴き始めた。
なのでとりあえず中にタオルを敷いて、リリーをそっと入れる。祖父に報告はしたけれどまだ階段が億劫ということで、私達二人で見守ることにした。

「大丈夫だよ」
自分に言い聞かせるみたいに、リリーに声をかける。

晴和さんは上からバスタオルをかけて、部屋の明かりを少し落とした。

「暗い方が、落ち着くよね」
「……うん」

そのまま二人で、しばらく待つことにした。
時計の針が、やけに大きく聞こえる。

リリーの小さな息遣いと、時折混じるか細い鳴き声を聞くたびに、胸が跳ねる。
その時間は永遠と感じるほど、長く感じた。


「莉佳子」
呼ばれて顔を上げると、晴和さんがすぐ隣に座っている。


「大丈夫だと信じよう」
無意識に、私は自分の手を握りしめていた。彼はその上から包み込むようにして、握る。
さっきデートで繋いだ時よりも、ずっと強く。

大丈夫だと私に言っているようで……自分にも言い聞かせているようにも。
そう思った次の日瞬間──リリーが強く鳴いた。

「……っ」
思わずぎゅっと、自分でも驚くほど力いっぱい、晴和さんの手を握っていた。

タオルの隙間から見えるリリーは身体を丸め、必死にいきんでいる。
まだ子供の小さな体で、必死に。

「がんばれ……」

思わず呟くが、声が震える。

「がんばれ、リリー」

次の瞬間だ。

「……あ」

かすかな声と同時に、タオルの隙間から、小さな、小さなものが動いた。

「生まれた……?」
「……ああ」

晴和さんの声も、少し掠れている。