再会は小さなぬくもりと一緒に

「ねぇ莉佳子、いつ引っ越してくるの?」

彼がマンションに引っ越して来て間もなく、ようやく生活感が出始めたリビングで、新品のソファーに座った晴和さんは問いかけた。
祖父が退院して数日が経とうとしている。
退院に合わせて急いで彼も引っ越してきたので、まだ部屋の片付けは続いていた。

「うーんと、とりあえずリリーが出産するまでは、居るかなぁ」
「でもせめて、一人暮らししてた荷物は移していいでしょ?」
「まぁそうだけど」

確かに今も一人暮らしのマンションはそのままにしている。
それよりも──一つ重大なことを忘れている気がしている。


「おじいちゃんに、何も報告してないと思うけど……」

私達が付き合っていることも、一緒に暮らそうとしていることも、何一つ報告をしていない気がしている。


「……そうだよね」

すぐに言葉が詰まる。

彼の言う「一緒に暮らす」という言葉が、どこまでを指しているのか。
恋人?同居人?それとも──。

何だか曖昧なまま、このまま進んで行きそうで怖かった。
そもそも曖昧にしている私が悪いのか。

そして次の日、仕事終わりに晴和さんは改めて祖父の家に来た。
茶の間で向かい合う三人。祖父は湯のみを手に、じっと晴和さんを見ている。
「で、話というのは何じゃ?」

晴和さんは、深く頭を下げた。
「……莉佳子と結婚させていただきたいんです」

一瞬、空気が止まった。

「いや、ちょっと待て」

誰よりも早く、私が止めた。

「順番間違ってない?」
「先に、お付き合いさせていただきたい、じゃなかろうか?」
「自分は結婚できるなら、何でも構いません」
晴和さんは即答した。

「……なんか、それ違う気がする」
思わず、声が出た。
確かにプロポーズをされて保留はしているが……いきなり祖父に言うには飛躍しすぎているだろう。


二人の視線が、私に集まる。
「莉佳子は、どう思っとるんじゃ?」