再会は小さなぬくもりと一緒に

(はぁ……)

昼休み返上で仕事をする中で。どうしてもリリーのことが心配になってしまってソワソワしてしまう。

「どうしたんですか?遅刻も珍しいですね」
隣でお昼を食べている鈴木さんが不思議そうに聞く。

「実はね……妊娠していたの」

「妊娠?!」

彼女が大声で叫ぶので慌てて口を塞ぐ。

「これ、これ!」

見せたのは携帯のリリーの写真。
あー、と納得した顔になった。

「えっじゃあ相手ってあのおじさん?」
「いや、それはありえない」

ハルは随分前に去勢済だ。子孫は残せない。

「正直相手が誰か、わからないんだよね……」

はぁーとため息をついて頭を抱える。

「里親、探さないと……」
「そうですね」

さすがに多頭飼に限度がある。里親を探すのが一番だろう。

「咲倉さん」

不意に呼ばれてびくっとなる。
振り向くと──晴和さんが立っていた。


「あ、伊賀上さん。おはようございます。遅刻して申し訳ございません」
「おはようございます。今仕事中?」
「あ、はい。ちょっとこれを早く終わらせたくて……大幅残業になりそうなので」
「ちょっと悪いけど、色々と時間いいかな?こっち来てくれる?」


彼はいつも通り穏やかだけど、ちょっとやばい空気を感じる。リリーについても報告しなければならないし。
仕方なくついて行った先は、誰もいない会議室だった。

「あのさ、妊娠ってどういうこと?」

「え、はい?」

「そういう相手が居たってこと?」

「恐らく……」

「恐らく?!」

「だってわからないですから」

「あのおじさんって?前の恋人??」
 
「はい?!」

「子供は別れた人との子供だから育てられない。里親に出すってこと?」

「……何の話ですか?」

多分彼は、何かを勘違いしている。
それも盛大に。

「とぼけないで。俺は莉佳子が別の人の子供を産んでも可愛がれる自信がある。だから俺じゃダメなのか??」

「へっ?」

「俺がその子の父親になる」

さらっとすごいことを言われたし、素直に言うと嬉しい言葉ではある。
彼がこんなに感情をぶつけてくるのも初めてだ。

「確かにあなたに妊娠の報告をしなければいけませんし、親になってくれるなら……でも妊娠しているのは、私じゃないです」

「えっ?」

「妊娠しているのは……リリーです」

「ええっ!!」


その後この誤解は、手帳に挟んだリリーのレントゲン写真を見せることで無事に解くことができた。
きちんと名前が入ったものをくれた動物病院の人、グッジョブ。