再会は小さなぬくもりと一緒に

結局彼は休日の間、一度も帰ってこなかった。
彼の父親──イノーシング株式会社の社長の言っていたことも確かめたかったけれど、何て連絡すればいいのかわからない。


そしてやってきた出勤日、ハルとリリーに餌をあげている時、リリーを見ながらはっとする。

「……病院!!」
慌てて診察券を見ると、今日は朝九時からやっている。
会社に遅刻する連絡を入れ、急いで準備をして飛び出した。


「やっぱり、そうですね」
レントゲンを前に、私は大きく息を吐いた。

リリーのお腹が急激に膨らんだことに加えて……乳首の色が赤い。これと同じ状態の猫を、随分前に前に見たことがある。それは妊娠中の猫だ。

そしてレントゲンを撮って確認すると、しっかり二匹の小さい命が確認できた。

どうやら先生が前の検診で『来週来てください』と言ったのも、妊娠している可能性があったかららしい。
猫の妊娠初期は分かりづらいらしく、前回の診察では確信に至れなかったのだと。

リリーはまだ半年ほど。でも野良猫は早い子だと四ヶ月頃から発情するらしい。
恐らく晴和さんが保護したのは交尾後だろう。

もう少し多いはずだけど、若すぎるから二匹だけなのかも、なんて先生は言っている。
子供を諦めるにしても、手術は危険を伴うのでこの病院では行っていないらしい。

「無事に産めるよう、サポートしましょう。離乳後、里親探しをするなら力になりますから」


まさかのことに唖然としながら、家に帰った。
真っ先にハルがリリーを毛繕いしにくる。

思えばリリーが最初から媚びていたのは、親子で生き抜く為だったのかも知れない、
そしてハルはリリーを『任せろおじちゃんが守ってやるぞ』的な気持ちだったのかなぁ、なんて。


赤ちゃんが生まれるなんて、どうすればいい?そんなどんよりとした気分のまま出社すると、すぐ昼休みに入ってしまった。

出勤するなり早々『伊賀上さんが、来週からイノーシングに戻ります』と上司から報告を受けた。今は席を外しているから戻り次第挨拶に行くとのことだった。