再会は小さなぬくもりと一緒に

「あの、私のことは……何と?」

「え?付き合ってるものだと」

「え?」

「大学時代からずっと心に決めてるって言ってたからね。札幌に飛ばして悪かったなと思ってたんだけど」

「……違います。付き合ってすらいません!」

「ええ!?」

祖父が声を上げて笑った。

「でも一時期は付き合っとったんじゃろ?」
まさかの発言にびくっとする。

「……なんで知って」
「なんとなく、じゃ」

さすが隠そうとしていたのは無理があったか。


「ごめん、失礼だけど別れた原因って……」
「伊賀上君、さすがに親には言い辛いじゃろ」
確かにその通りで、苦笑する。

「札幌行きが原因なら、少し責任を感じるなとずっと思っていて……」

あの札幌行きは別れの原因ではあるけれど……本質は少し違う。
私は少し考えてから答えた。

「……優しい人なんです。でも、本当に優しいかって言われると、違う気がして」
「哲学じゃな」
祖父の軽い突っ込みに肘で返す。

「彼は自分の中に完全なものがちゃんとあった。私はそれが理解できなかった。こんな感じだと思います」

多分こういう考えの食い違いを、当時の私達は埋めることができなかったのだろう。


「晴和の悪い癖だ」
社長が静かに言った。

「後継者として完璧であれという意識が強すぎる。本音を言えなくなるんだ」


その言葉がストンと心に落ちてくる。
何も言えずにいると、申し訳ないがそろそろ時間だ、と社長は立ち上がった。

「私は、あなたとの吉報を待っているけど、あなたが幸せになれる道を一番に応援するから」

去っていく背中が、晴和さんと重なった。
それと同時に脳裏に浮かぶのは──あの荒れた声を出した晴和さんの姿だった。
彼はひょっとしたら、変わろうとしてるのではないか。ほんの少しそう感じていた。