「やっぱり本当なんですね」
仕事中、鈴木さんが何でもない顔で言った。
「伊賀上さんと原さんのこと。昔婚約話出てたって先輩に聞いたんですよ」
その言葉は、あまりにもあっさりしていて。だから余計に、深く刺さった。
「何でみんな知ってるのかな?」
「あぁ、何か先輩が、この前イノーシング側の人と話した時に、伊賀上さんは『以前ブランシェッドワークの娘さんと婚約話があった』というのを耳にしたことがあったらしいです。それに昨日の会食でもその話が出てたって聞きましたけど?」
「ああ、そうだね……」
「そんな格好の噂、すぐに広がるに決まってるじゃないですか。現に二人、お似合いですしね」
彼女の言葉に悪意はないけれど、心の奥にその言葉が突き刺さる。
「伊賀上さんの地方行きもあって断ったって聞きましたけど、でも、完全に終わったかどうかは、分からないですよね」
笑いながら言う鈴木さんの声が遠くなる。
そしてぐるぐると私の中で、ある考えが、静かに芽を出す。
──私は、何なのだろう。
今はただ一緒に働いてる仲間で、たまたま一緒に暮らしている仲ではあるけれど……過去のことを説明するも、報告する必要も、私には一切しなくて良い存在だと思っているのだろうか。
何だか過去の自分が馬鹿らしく思える。あの恋に浮かれた過去を消してしまいたい。
仕事中、鈴木さんが何でもない顔で言った。
「伊賀上さんと原さんのこと。昔婚約話出てたって先輩に聞いたんですよ」
その言葉は、あまりにもあっさりしていて。だから余計に、深く刺さった。
「何でみんな知ってるのかな?」
「あぁ、何か先輩が、この前イノーシング側の人と話した時に、伊賀上さんは『以前ブランシェッドワークの娘さんと婚約話があった』というのを耳にしたことがあったらしいです。それに昨日の会食でもその話が出てたって聞きましたけど?」
「ああ、そうだね……」
「そんな格好の噂、すぐに広がるに決まってるじゃないですか。現に二人、お似合いですしね」
彼女の言葉に悪意はないけれど、心の奥にその言葉が突き刺さる。
「伊賀上さんの地方行きもあって断ったって聞きましたけど、でも、完全に終わったかどうかは、分からないですよね」
笑いながら言う鈴木さんの声が遠くなる。
そしてぐるぐると私の中で、ある考えが、静かに芽を出す。
──私は、何なのだろう。
今はただ一緒に働いてる仲間で、たまたま一緒に暮らしている仲ではあるけれど……過去のことを説明するも、報告する必要も、私には一切しなくて良い存在だと思っているのだろうか。
何だか過去の自分が馬鹿らしく思える。あの恋に浮かれた過去を消してしまいたい。



