現れた原美月さんは、今思えば想像以上に「噂にしやすい人」だろう。
上品で、落ち着いていて、綺麗。
それでいて主張しすぎず、にこやかで。それは長年『社長令嬢』としての立場を求められていて、それに倣った振る舞いをしていたからだろう。
彼女が着ているのは自分の会社のブランドであるブランシェッドワーク。幅広い年代層に受けるシンプルなデザインだけれど、彼女が着ると洗練された空気を服が纏う。
晴和さんと二人の並ぶ姿は──誰が見ても「お似合い」と言われるだろう。
応接スペースへ案内する途中、彼女は柔らかく頭を下げた。
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
その声を聞いた瞬間、周囲の視線が一斉に集まる。
──ああ、始まった。
コピー機の前、給湯室、通路の端。
あちこちから、ささやき声が漏れ始める。
「……やっぱり本当なのかな」 「前から噂あったよね」 「断ったって聞いてたけど、まだ続いてたのかな」
胸の奥で、何かが音を立てて崩れた。
二人の婚約話は、どうやら秘密にされていることではないらしい。公然の事実という感じだ。
上品で、落ち着いていて、綺麗。
それでいて主張しすぎず、にこやかで。それは長年『社長令嬢』としての立場を求められていて、それに倣った振る舞いをしていたからだろう。
彼女が着ているのは自分の会社のブランドであるブランシェッドワーク。幅広い年代層に受けるシンプルなデザインだけれど、彼女が着ると洗練された空気を服が纏う。
晴和さんと二人の並ぶ姿は──誰が見ても「お似合い」と言われるだろう。
応接スペースへ案内する途中、彼女は柔らかく頭を下げた。
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
その声を聞いた瞬間、周囲の視線が一斉に集まる。
──ああ、始まった。
コピー機の前、給湯室、通路の端。
あちこちから、ささやき声が漏れ始める。
「……やっぱり本当なのかな」 「前から噂あったよね」 「断ったって聞いてたけど、まだ続いてたのかな」
胸の奥で、何かが音を立てて崩れた。
二人の婚約話は、どうやら秘密にされていることではないらしい。公然の事実という感じだ。



