『伊賀上さんに用事がありますが、そちらに初めて伺うので挨拶がしたい』とのことだった。
うちは確かリュミエールと交流はあるが、関連会社──山下さんのお兄さんのアパレルブランド、ブランシェッドワークとは取引がない。
こちらも急成長しているブランドなので、うちの会社としても是非繋いでおきたいのだろう。
そして午後になり──受付からの内線が入った。
「ブランシェッドワーク、原美月様がいらっしゃいました」
ぴくっとフロアの空気が微かに揺れたのが分かった。
「伊賀上さん、ご対応をお願いします」
晴和さんが一瞬だけ視線を伏せ、それからいつもの営業用の穏やかな笑みを作って立ち上がった。
「分かりました、では後ほど数名ご同席をお願いします」
そうして数名先輩を指名すると、彼は受付に向かって行った。
──私は選ばれなかった。
当たり前の話なんだけど、胸の奥がきゅっと縮む。
分かっている。頭では、ちゃんと理解している。
私はまだ、新しい取引先を任される立場ではないのだから。
でも、心がざわめいて仕方ないのは、きちんと仕事としての感情を分けられない私の弱さで……そもそも彼に未練を残しすぎなのだろう。
どうしても心の中で、彼女とうまくいって欲しくないという気持ちが先行してしまう。
うちは確かリュミエールと交流はあるが、関連会社──山下さんのお兄さんのアパレルブランド、ブランシェッドワークとは取引がない。
こちらも急成長しているブランドなので、うちの会社としても是非繋いでおきたいのだろう。
そして午後になり──受付からの内線が入った。
「ブランシェッドワーク、原美月様がいらっしゃいました」
ぴくっとフロアの空気が微かに揺れたのが分かった。
「伊賀上さん、ご対応をお願いします」
晴和さんが一瞬だけ視線を伏せ、それからいつもの営業用の穏やかな笑みを作って立ち上がった。
「分かりました、では後ほど数名ご同席をお願いします」
そうして数名先輩を指名すると、彼は受付に向かって行った。
──私は選ばれなかった。
当たり前の話なんだけど、胸の奥がきゅっと縮む。
分かっている。頭では、ちゃんと理解している。
私はまだ、新しい取引先を任される立場ではないのだから。
でも、心がざわめいて仕方ないのは、きちんと仕事としての感情を分けられない私の弱さで……そもそも彼に未練を残しすぎなのだろう。
どうしても心の中で、彼女とうまくいって欲しくないという気持ちが先行してしまう。



