それはつい二時間程前のこと。
『咲倉さん居ますか?』
名前を呼ばれて立ち上がると、そこに居たのはリュミエールの山下社長だった。
「あの、なぜこちらに?」
「別件でね、晴和君に用事ができたの。渋谷の店舗のビルに問題があって、それの話し合いにきたのよ」
実はそろそろ早退しようと準備していたところだったのだ。
「今日は来れるわよね?私、楽しみにしているのよ。大丈夫だよねぇ、伊賀上さん?」
わざとらしい口調出言うと振り向き、晴和さんを見る。晴和さんは頷きながらも引き攣った笑いを浮かべていた。
どうやらその店舗ビルの問題というものは、以前晴和さんが関わっていたプロジェクトのものだったらしく……結局彼は山下さんに終業時間まで拘束されていた。
という訳で、結局晴和さんと山下さんも一緒に、会食場所に向かうことになった。
タクシーで向かった先は銀座。外観も部屋も控えめな照明で包まれた、落ち着いた料亭だ。
すでに席には、少し年上で山下さんと面識のあるうちの営業部の者と、山下さんの部下らしき男性が二人。
そして──若い女性が一人、控えめに座っていた。
「こちら、うちの関連会社、ブランシェッドワーク営業部の原美月です。実は私の親戚なんです」
そう山下さんに紹介された彼女は、柔らかく微笑んだ。
その時はっきりと思い出した。
『あのパーティーで親しげに喋っていた人だ』と。
親戚と言葉を濁していたが、山下さんの姪で関連会社の社長令嬢であろう。
彼女はあの時と同じで、上品でどこか『最初からここに属している』空気を纏っている。あの時感じた違いを、よりはっきりと目の前に突き付けられた気がした。
その証拠に私は彼女を覚えていても……彼女は私を覚えている雰囲気はない。
会話は仕事の話が中心で、私は聞き役に徹した。
山下さんの部下だという、少し年上の人達が面白い話を聞かせてくれたので退屈はしなかった。
晴和さんは終始落ち着いていたけれど、原さんと話す時だけ、何となく空気が違って見える。
『咲倉さん居ますか?』
名前を呼ばれて立ち上がると、そこに居たのはリュミエールの山下社長だった。
「あの、なぜこちらに?」
「別件でね、晴和君に用事ができたの。渋谷の店舗のビルに問題があって、それの話し合いにきたのよ」
実はそろそろ早退しようと準備していたところだったのだ。
「今日は来れるわよね?私、楽しみにしているのよ。大丈夫だよねぇ、伊賀上さん?」
わざとらしい口調出言うと振り向き、晴和さんを見る。晴和さんは頷きながらも引き攣った笑いを浮かべていた。
どうやらその店舗ビルの問題というものは、以前晴和さんが関わっていたプロジェクトのものだったらしく……結局彼は山下さんに終業時間まで拘束されていた。
という訳で、結局晴和さんと山下さんも一緒に、会食場所に向かうことになった。
タクシーで向かった先は銀座。外観も部屋も控えめな照明で包まれた、落ち着いた料亭だ。
すでに席には、少し年上で山下さんと面識のあるうちの営業部の者と、山下さんの部下らしき男性が二人。
そして──若い女性が一人、控えめに座っていた。
「こちら、うちの関連会社、ブランシェッドワーク営業部の原美月です。実は私の親戚なんです」
そう山下さんに紹介された彼女は、柔らかく微笑んだ。
その時はっきりと思い出した。
『あのパーティーで親しげに喋っていた人だ』と。
親戚と言葉を濁していたが、山下さんの姪で関連会社の社長令嬢であろう。
彼女はあの時と同じで、上品でどこか『最初からここに属している』空気を纏っている。あの時感じた違いを、よりはっきりと目の前に突き付けられた気がした。
その証拠に私は彼女を覚えていても……彼女は私を覚えている雰囲気はない。
会話は仕事の話が中心で、私は聞き役に徹した。
山下さんの部下だという、少し年上の人達が面白い話を聞かせてくれたので退屈はしなかった。
晴和さんは終始落ち着いていたけれど、原さんと話す時だけ、何となく空気が違って見える。



