再会は小さなぬくもりと一緒に

──やっぱり彼は、そっち側の人なのだな。

遠くから見た横顔は、私の知っている“彼氏”とは、別の世界の人みたいだった。
身分差という言葉が、はっきりと胸に落ちた瞬間だった。


その場で、もう一つ判明した事実。
社長の挨拶の中で、はっきりとこう言っていた。

「来年度は札幌支社を立ち上げます。来年度は私の倅も入社するので、ひとまず倅も札幌に行ってもらおうと」

その場ではっきりとそう言ったイノーシングコーポレーションの社長。
社長の倅と紹介されていたのは、彼一人だった。

新年度まで、残り二ヶ月を切っていた頃なのに──私は何も、知らされていなかった。


その夜、私たちは会う約束をしていた。今思えばパーティーの後で……ということだったのだろう。
私がパーティーに来てたということで、待ち合わせ場所がホテルの近くのバーになった。指定されたバーは、やっぱり私には少し背伸びした場所のように思った。

「いつかは、親に会わせたかったんだけど……」

今日のことは何も触れず、晴和さんは困ったようにそれだけ言った。
でも、私の中で一番大きかったのは、別のこと。

「……どうして、札幌のこと黙ってたの?」

問い詰めると、彼は視線を逸らした。

「拒否されたくなかったんだ」と。
そして悪気なく、こう続けた。

「あのさ、大学辞めて、一緒に来てよ」

その時ぷつりと、何かが完全に切れた音がした。


「何でさ、そんなに簡単に言うのよ」

声が震えた。
彼は穏やかで優しい人だと思っていた。
でも、その優しさは対等じゃない。彼は私を下に見ているからこその優しさで……私は見下されている。
彼の優しさは『自分の思い通りにしたいから』なのがはっきりとわかってしまった。

 
「……もう、無理。別れましょう」

その夜、私は彼に別れを告げた。
彼は怒りもせず、悲しみも表さず……何も感情のない顔で頷くだけだった。