出勤すると、予定が書かれているホワイトボードには『伊賀上、咲倉⇒16:00外出から直帰(リュミエール)』としっかり書かれている。
ちなみに私が行くことについては『頑張れよ』と声をかけられることが多かったので、行くのは私でやっぱり問題は無いらしい。
「あ、そういえば昨日咲倉さんが帰った後に、イノーシング側から黒江さんのことで連絡がありましたよ」
ふと視線が合った鈴木さんから、とある紙を渡される。
「これから黒江さんについてはイノーシング側が対応するそうで落ち着いたみたいです。元々向こう側が広報の窓口やってますからね」
報告書には黒江さんの一連の経緯や、イノーシング側のからの今後の対応について、細かく書かれていた。
『都市開発事業部はプロジェクトを束ねる部署であるが、お客様からの真の要望に応えるには専門が担当の窓口で対応に当たるのが望ましい』と。
「何か一安心ですね」
今までどんなクレームも私達が一旦預り、担当と話し合い、また私達がお客様に報告という対応をしなければならなかった。それが直接対応してくれるとなるのはすごくありがたい話だ。
そうせざる得なかったのは責任の所在が曖昧だったからだけれど、これからはそれをはっきりさせる。そう明言されていた。
そうしてくれるだけでも随分ありがたい。
(きっと晴和さんだな……)
この件含め『爆弾処理』について、何度か彼から話を聞かれたことがある。『手間を取らせないための仕組みを作りたいと思っている』とは言っていたもののすぐに実行できるのは、彼の立場や人脈と……彼自身の行動力もあるのだろう。それが正直、眩しい。
そして時間は夕方四時、私達は「行ってきます」と挨拶をしてリュミエールに向かった。
「何かさぁ、二人で久しぶりの外出がこれって、味気ないよね」
彼が地下鉄の待ち時間に、そう呟いた。
「何ですか、それ」
「だってさ、昼休みも微妙にずれるし帰りの時間も被らないし、週末も結局俺は仕事してたし……莉佳子は勝手にお見舞い行っちゃうし」
「何で許可が必要なんですか。私のおじいちゃんですよ?」
「そうだけど……」
そうしているうちに、ホームに電車が滑り込んでくる。
昼間の地下鉄は乗客が少なく、座席に二人で並んで座った。何だか変なことを言っているので、何を言えばいいのか。
「もうちょっと、一緒に出かけられると思ってたんだよね」
「この前食事に行ったじゃないですか」
「まぁそうだけど、さ」
この前あの黒江さん騒動の日は、結局帰りに他の人達にも捕まったこともあり、部署内の小規模な飲み会になってしまった。
そして私が『祖父の見舞いに行く』と二十一時に間に合うように先に一人で帰ってきたのだ。
「もっとチーム内でランチ会とか飲み会とか増えればいいのかな。そしたら部署内の空気も良くなるだろうし、莉佳子との距離も縮まるのかなぁ」
彼の言葉が意外で……ただ私との距離を縮めてどうするつもりなのか彼の本意はわかりかねない。
でもはっきりと彼の気持ちを確認するのが怖くて、何も言わずにただ窓の外の、真っ暗闇を見つめていた。
ちなみに私が行くことについては『頑張れよ』と声をかけられることが多かったので、行くのは私でやっぱり問題は無いらしい。
「あ、そういえば昨日咲倉さんが帰った後に、イノーシング側から黒江さんのことで連絡がありましたよ」
ふと視線が合った鈴木さんから、とある紙を渡される。
「これから黒江さんについてはイノーシング側が対応するそうで落ち着いたみたいです。元々向こう側が広報の窓口やってますからね」
報告書には黒江さんの一連の経緯や、イノーシング側のからの今後の対応について、細かく書かれていた。
『都市開発事業部はプロジェクトを束ねる部署であるが、お客様からの真の要望に応えるには専門が担当の窓口で対応に当たるのが望ましい』と。
「何か一安心ですね」
今までどんなクレームも私達が一旦預り、担当と話し合い、また私達がお客様に報告という対応をしなければならなかった。それが直接対応してくれるとなるのはすごくありがたい話だ。
そうせざる得なかったのは責任の所在が曖昧だったからだけれど、これからはそれをはっきりさせる。そう明言されていた。
そうしてくれるだけでも随分ありがたい。
(きっと晴和さんだな……)
この件含め『爆弾処理』について、何度か彼から話を聞かれたことがある。『手間を取らせないための仕組みを作りたいと思っている』とは言っていたもののすぐに実行できるのは、彼の立場や人脈と……彼自身の行動力もあるのだろう。それが正直、眩しい。
そして時間は夕方四時、私達は「行ってきます」と挨拶をしてリュミエールに向かった。
「何かさぁ、二人で久しぶりの外出がこれって、味気ないよね」
彼が地下鉄の待ち時間に、そう呟いた。
「何ですか、それ」
「だってさ、昼休みも微妙にずれるし帰りの時間も被らないし、週末も結局俺は仕事してたし……莉佳子は勝手にお見舞い行っちゃうし」
「何で許可が必要なんですか。私のおじいちゃんですよ?」
「そうだけど……」
そうしているうちに、ホームに電車が滑り込んでくる。
昼間の地下鉄は乗客が少なく、座席に二人で並んで座った。何だか変なことを言っているので、何を言えばいいのか。
「もうちょっと、一緒に出かけられると思ってたんだよね」
「この前食事に行ったじゃないですか」
「まぁそうだけど、さ」
この前あの黒江さん騒動の日は、結局帰りに他の人達にも捕まったこともあり、部署内の小規模な飲み会になってしまった。
そして私が『祖父の見舞いに行く』と二十一時に間に合うように先に一人で帰ってきたのだ。
「もっとチーム内でランチ会とか飲み会とか増えればいいのかな。そしたら部署内の空気も良くなるだろうし、莉佳子との距離も縮まるのかなぁ」
彼の言葉が意外で……ただ私との距離を縮めてどうするつもりなのか彼の本意はわかりかねない。
でもはっきりと彼の気持ちを確認するのが怖くて、何も言わずにただ窓の外の、真っ暗闇を見つめていた。



