再会は小さなぬくもりと一緒に


そこでポンと、あることが思いついた。

「ねぇおじいちゃん」
「何じゃ?」
「この子の名前『ハル』にしたらどう?」

正直、チビと言うには育ち過ぎたこの子は、最近は『おい』とか『お前』とかと呼ばれていて、久しく名前で呼ばれていない。
真剣に祖父と名前を考えていたが、どうも無反応で私達もしっくり来なかった。


「唯一反応する名前だし、毛の色が晴れた日の太陽みたいな色だし……あと、同じ名前で親近感持って欲しいなーって」

一瞬二人の時が止まったようだが、すぐに晴和さんは声を上げて笑う。
「光栄だね、よろしくハル!」と言いながら。



そして猫の名前がハルになってしばらくした頃、私は大学に合格した。
彼に合格を伝えると、祖父の家に行く時に合わせて来てくれた。そこでお祝いを貰ったが、ペンケースとシャープペンシルなので特別感は無いなと思ったが……社会人の今でも使っているので、かなり上質な物だったのだろう。

そしてその日、ほんの少しだけ彼との仲が進展した。

「何かちょっとだけ、ハルに嫉妬してる」
「何で?」
「俺より呼ばれる回数多いじゃん、絶対」

帰り道、彼と歩いていると不意にそんなことを漏らしていて、思わずぷっと笑ってしまった。
彼は拗ねたように口を尖らせていたので、彼にも可愛いところがあるなと思った。

その頃チビと呼んでいた猫は『ハル』と言う名前を聞くと尻尾をブンブンと振ってアピールするぐらい、この名前に馴染んでいた。


「でも私は……いつもハルを呼ぶ度に、晴和さんのことを思い出しちゃいます」

そう言うと彼は照れくさそうに笑みを浮かべると、私の頭にそっと触れた。
暫く見つめ合い、ドキドキと心音が高鳴る。

「受験も終わったし、そろそろ二人で会いたいな」
目を細めて微笑む彼の姿は眩しくて……私は頷くのが精一杯だった。

「楽しみにしてるね」
その時の私は、茹蛸のように真っ赤だったに違いない。それぐらい緊張したし、すごくすごく嬉しかったのだ。



そしてこの日以降、少しづつ祖父宅以外でも会うようになっていき──少しづつ『恋人らしく』なっていった。