再会は小さなぬくもりと一緒に

とりあえずハルの時と同じように、二階の部屋に子猫を隔離。ブルブルとふるえる子猫を、湯たんぽと毛布でくるんだ。

「後で押し入れからサークルを出します。多分ハルはここには来ないと思いますけど」
「わかった、ありがとう」
「で、どうするんですか?この子。本当に飼うんですか?」 

確か彼の母は、猫アレルギーだったと記憶している。
実家暮らしなのかわからないが、飼うのに準備もいるだろう。


「実はそろそろ引っ越ししたくて、物件を探しているんだ」
「そうなんですね」
「すぐペット可の物件を探すよ。それで申し訳ないんだけど……しばらく預かってくれないかな?」

パンと両手を合わせてお願いするポーズで、頭を下げる。


「ホントごめん、暫くの間だけ、お願いしたい!」


恐らくだろうけど。
彼が祖父を訪ねたのは、そういうことだったのだろう。
自分が飼うから、それまでの間預かって欲しかったのだろう。


私ははぁーっと息を吐いた。

「とりあえずおじいちゃんと相談します」
「それで先生、どこに入院してるの?」
「あ、向こうの医大病院で……」


その時彼のお腹がグーと鳴った。
恥ずかしそうに顔を赤らめている。もう時刻も二十一時を回っているので、お腹が空いているのだろう。


「とりあえず、夕飯食べませんか?」
そう提案すると、彼は「お願いします」と照れ笑いしながら頭を下げた。



「にゃーにゃぁぁ!!」

そして二人で、ご飯を食べることになった。
おかずは簡単に作ったサラダとお味噌汁と、鰹の刺身だけなのだけど。


「駄目よハル、あげないから」

ダイニングの足元でニャーニャーと鳴き続けるハル。
確実に鰹の刺身を狙っている。

「可哀そうだし、あげて良い?」
「ダメです。さっきご飯食べたし、生のままじゃダメです」

えーっと言いたげな彼に「もう立派なシニア猫なんですから」と言うと、ふっと微笑んで「そうだよね」と。


「ハル、もう八歳だっけ?」
「そうですね、八歳半ぐらいだと思います」
「もうそんなに経つんだね。そりゃ丸くなるわけだ」

昔を思い出してなのか、彼はクスリと笑う。
暫く沈黙が流れて、気まずい雰囲気。
何を話したらいいのかわからない。
今は『上司』としての彼しか知らないし……どこまで過去を覚えているのかわからないし、踏み込んでいいのかわからない。ひょっとしたら、殆どのことを忘れているのかも知れないし。


「何か、懐かしい感じだね」
彼が味噌汁を飲みながら、ポツリと呟いた。
懐かしさを感じるということは、微かにでも覚えているのだろうか。少しだけ安堵しながら、私は残りのご飯をかき込んだ。