最悪の事態が起こった。

ある日、田中さんに別室に呼び出された。

「ねぇ、藤田さんって、ラウンジで働いてるの……?」

「え!?いえ、そんな事してないです!」

「実は、こういう写真を前同期から送られて」

田中さんにスマホを渡された。

そこには、ラウンジで接客する私の姿が少しだけ映っていた。

嫌な汗が体をつたった。

「大丈夫だよ……送った同期は別の女の子の写真をこっそり撮っていただけ。俺はこれが藤田さんだって気づいたけど、誰にも言ってない」

最悪だ……。偶然映ってしまったなんて。

「あの……それは私じゃないです。」

「隠さなくていいよ、誰にも言わない。ただ……」

田中さんはそっと私の手に触れた。

「秘密にする。だから、俺と付き合ってほしい」

ラウンジなんかで働くんじゃなかった。

心底後悔した。

「すみません……今は何も言えません」

私はその部屋から出た。

もう限界だここにいるのは。

もうここを辞めよう。

私は河内さんにメッセージを送った。

「私はもうこの会社を辞めます。」

そしたらすぐに電話がかかってきた。

「どうした」

なぜか、河内さんの声に安心した。

「私がラウンジで働いていた事が他の社員にバレてしまいました。」

「……なんとか誤魔化せないのか?」

「実は……それとは別に、私が水商売をやってるっていう噂も広まっています。あと、副社長に取り入ってると」

河内さんはしばらく沈黙した。

「わかった、俺も考える」

電話を切った後、私は仕事に戻って、家に帰った後に転職サイトを眺めていた。

このままではダメだ。

河内さんにも迷惑をかけてしまう。

* * *

次の日出社したら、上司に呼び出された。

「今から会議室に行ってくれ」

会議室?なんだろう……。

よくわからないまま会議室に行くと、そこには河内さんがいた。

椅子に座って私をじっと見ている。

「藤田、提案がある。」

「はい」

「俺の秘書になれ」

「え!?」

突然の提案に、私は返事ができないでいた。

秘書……?

それは一体どういう意味なんだろう。

河内さんの瞳は真剣だった。

「考えてみてくれ。返事は明日でいい」

私の頭の中は混乱していた。

秘書になるということは、河内さんともっと近い距離で働くということ。

でも、それで今の問題は解決するのだろうか。

そして、私の気持ちは……

答えを出すまで、あと一日しかなかった。