<秘書>

俺はとうとう秘書をつけられた。

別にそんな気もなかった。

勝手に父がどっかの企業の令嬢を秘書として俺につけた。

これは計算されたものだ。

俺はあくまで同じ会社の社員としてしか接していなかった。

ところが──

「副社長……今度一緒にどこか行きませんか?」

急に距離を詰めてきた。

まいった。

「すまない。俺は今仕事の事で手一杯だ」

冷たく突き放してしまった。

その後、父に秘書を外すように言ったが聞き入れなかった。

そして、その秘書は仕事中は大人しくなった。

でも仕事が終わると近づいてくる。

休みの日は何してるか、趣味は何か。

「プライベートは詮索されたくない」

そのまままた突っぱねた。

その後は、仕事でもプライベートでも特に何も起こらなかった。

ただ──

仕事帰り、プライベート、常に誰かの視線を感じる。

ある日、自宅のポストに匿名で封筒が入っていた。

中を見た時、俺のプライベートの写真が山のように出てきた。

嫌な予感がした。

次の日会社に行くと、秘書はいつもと変わらず仕事をしている。

勘違いか?

昼休憩の時に席を外そうと部屋から出た時

「河内さんって、茶道されてるんですね」


──やっぱりこの女か。

俺が唯一心が安らぐ瞬間は茶道をしてる時だけだ。

それさえも脅かしてくるのか。

俺は父に写真を持って行った。

「業務に支障がでます。」

流石にその行動については父も見過ごせなかったのか、秘書はいなくなった。

それから、秘書を置かない事にきめた。