その日、私は河内さんに言われて、初めて買ってもらったドレスを着て高級ホテルのラウンジに行った。

二人でソファに座って都会の夜景をゆったりと見ていた。

「優美」

河内さんを見ると、何か手に持っている。

「あ、あの指輪ですか?」

「うん」

ケースの中を見ると、カタログに載っていた指輪が入っていた。

それは、紙で見るよりも、もっと美しく、輝いていた。

「わー…すごい綺麗」

河内さんは私の手をとって指輪をはめた。

そして、私をじっと見た。

「どうしましたか?」

「初めて優美と会った日の事を思い出していた」

借金を返すために働いていたラウンジ。

そこに突然現れた河内さん。

何故か選ばれた私。

次の日に会社で会って、それが副社長で……。

借金を肩代わりする代わりに出された取引。

『俺専属の嬢になって欲しい。』

「まさかこうなるとはあの時思ってもいませんでした」

指輪のピンクの宝石が美しく煌めく。

それを見つめていた。

「俺はこうなりたいとずっと思っていた。初めて会った時から」

河内さんが私の頬を撫でた。

「でもまさかこんなに逞しくなるとは思っていなかった」

私も、あの時はただ借金返済の事でいっぱいいっぱいだった。

「私、河内さんに出会って、強くなれた気がします」

河内さんは私の手にそっと触れた。

「あの日、あそこに行ってよかった」

私もあそこで働いててよかったと今は思える。

でも……

「もうラウンジには行かないでくださいね!」

河内さんはクスっと笑った。

「俺には専属がいるからな」

優しく私を見つめる河内さんの瞳に安心する。

「はい、私はずっと河内さん専属です!」

私達はそっと誓いのキスを交わした。

永遠を夢見て──

──fin