週末、駅で両親と待ち合わせしていた。

私は河内さんと両親を待っていた。

すると、見覚えがある二人の姿が見えてきた。

数年ぶりに見た両親は、時の流れを感じさせる姿に見えた。

「河内さん本日はありがとうございます」

両親は河内さんに深々と頭を下げた。

「初めまして、河内です。近々こちらから優美さんを連れてお会いしようと思ってました」

両親がキョトンとしている。

両親には、あの職場を辞めたことも北海道に行った事も、河内さんと暮らしてる事も何一つ言ってなかった。

「河内さん一緒に行くってどういう事ですか?」

私はコソコソ聞いた。

「そのままの意味だ」

その後両親を含め、レストランに行った。

見晴らしのいいレストランで、河内さんが予約した場所だった。

「お父さんお母さん、話って何?」

両親は顔を見合わせて頷いた。

「残りの借金のお金、全部揃ったんだよ」

それを聞いた瞬間、頭が真っ白になった。

それを返すために私は何年もの間、ただただ仕事をこなしていた。

両親の会社が倒産したから私が頑張らないとって。

いつの間に……?

「今度残債を全額振り込ませて頂きます。本当にありがとうございました」

深々と河内さんに頭を下げる両親。

「いえ、逆にその借金に救われました」

また両親はキョトンとしている。

確かに突然言われたら意味がわからない。

「あの……優美と河内さんはどういうご関係で……?」

お母さんが尋ねた。

私が何か言おうとした時、河内さんが遮った。

「僕は優美さんと結婚したいと思ってます」

私も両親もびっくりして固まった。

目的を果たした河内さんの顔は生き生きとしている。

私まだ返事してないのに。

「そんな……優美は頑張るしか取り柄がない子で……」

お母さんが動揺して口走る。

私もそう思ってるけど。

「そういうところに惹かれました」

河内さんの瞳はとても優しい。

「優美、今も河内さんの部下なのか?」

お父さんが小声で聞いてくる。

「えっと……」

「ちゃんとお伝えしてませんでしたが、僕は会社の代表取締役です」

また両親が唖然としている。

「あの……上司じゃなくて、あの時河内さんは副社長だったの。びっくりするかと思って言えなかったの」

「そうなんですか……」

父はたじろいでいる。

「私達は優美に散々苦労をかけたので、もう自由にさせたいと思ってます。優美が河内さんと一緒になりたいなら、ただ見守ります」

「優美は河内さんにお返事したの?」

お母さんが聞く。

「実はまだ……」

「僕は待つので、大丈夫です」

河内さんの目は真っ直ぐだった。

その後、両親は河内さんにまた頭を下げた。

「優美を宜しくお願いします」

「はい、幸せにします。絶対に」

外堀は埋められてしまった。


私は突然の展開に頭がついていけなかった。

借金完済、正式に両親の前でプロポーズ。

私はもう意地を張る理由もなくなった。

車の中で上機嫌な河内さんは私に尋ねる

「優美の目標と、俺の目標が同時に達成できた日だ」

「はい……借金がやっと返せました……」

車は人気がない場所に停められた。

「で、返事は?」

ここまで外堀を埋められて、返事も何も!

でも……

「はい、河内さんと結婚します」

やっと、なんの後ろめたさもなく、言えた言葉だった。