急いで帰ってきた私は、エプロンをつけて気合を入れた。

今日は河内さんの為に晩御飯を作る!

私は買ってきた具材を使ってパエリアを作っていた。

本当は料理はあまり得意じゃないけど、少しでも喜んでもらいたい。

料理を作り終わったタイミングで河内さんが帰ってきた。

私は玄関に直行した。

「おかえりなさい」

河内さんの疲れた表情が一変した。

突然抱きしめられた。

「早く結婚しよう。いつまで待たせるんだよ」

「すみません……」

「何を迷っている」

それは……

「まだ借金返せてないんで……」

河内さんの表情が曇った。

「まだ言うのかそれを」

だって、借金肩代わりしてもらったまま結婚なんて、やっぱり無理だ。

親もきっといい気分じゃない。

「家賃がもうかからないので、前よりもっと多く返済できます!」

「だからいらないんだよ……」

落ち込んだ河内さんのジャケットを受け取って、料理を食べてもらった。

その後、不貞腐れた河内さんの肩を揉んでいた。

「強情な奴だ……」

「すみません」

振り返った河内さんにキスをされた。

「でも好きなんだよ」

胸がぎゅっとなる。

「ありがとうございます」

私はこんなに愛されて幸せ者だ。

「……そうか。もうこうなったら既成事実を作ろう」

「え?」

河内さんが距離を縮めてきた。

「既成事実って……」

嫌な予感がした。

ソファに倒され、襟元に河内さんの手が触れた瞬間、その手を掴んだ。

「それはダメです!!」

「いつかその日がくる。それが早まるだけだ」

「私はまだ決めてないです!」

この男恐るべし…!

押し問答をしてやっと解放された。

「待つって言ってたのに!」

「待ってるのに早く答えを出さないからだ」

その後気持ちを切り替えて、河内さんにウィスキーを用意して渡した。

「……あの男は今日どうだった」

秋月さんの事か……

「プライベートで関わるつもりはないと言いました」

「それで大人しくなるといいが……。エスカレートするなら俺がでる」

河内さんがでてくるとあの会社に居づらくなる!

「大丈夫です。エスカレートしたら然るべきところに言うので」

その瞬間、河内さんの唇が首元に触れた。

少し痛みが走った。

まさか……

私は急いで鏡を見に行った。

くっきりと、痕がついていた。

「なんでこんな事するんですか!」

「魔除けだ」

勝手に暴走する河内さんに疲れて私はその後すぐ寝た。

この魔除けが逆効果になる事とは知らずに……