翌朝。

ホテルをチェックアウトして、二人でアパートに向かうと、引っ越しのトラックが停まっていた。

どんどん搬出される荷物。

私がここにいた時間は胸の中に残る。

そのトラックを見送って、今度は空港に行った。

二人で飛行機に乗り、北の大地を見下ろした。

思い出を胸に私はまた旅立つ。

その時河内さんの手が私の手を包み込んだ。

こんなに大切にされて、私は贅沢ものだ。

* * *

空港に降り立ち、河内さんのタワーマンションに向かった。

3年ぶりに見たマンションは、都会の象徴のようだ。

そして部屋の中に入った。

「こっちだ」

案内された部屋は何も置かれていなくて、綺麗に掃除がされていた。

「ここが今日からお前の部屋だ」

窓の外に広がる都会の街並み。

「こんなところに住めるなんて……私には勿体無いです」

その時肩に手を置かれた。

「自信を持て。俺の心をここまで動かせた人間はお前が初めてだ」

河内さんは別に部屋に行ってから、あのドレスを持ってきた。

「これが似合う女はそういない」

「ありがとうございます」

河内さんがじっと見つめてきた。

「なんですか?」

「今日からここがお前の家だ」

怪しげな笑み。

「はい!ここが今から私の本拠地です」

「優美は頼もしいな…」

荷物が届くのは明日──

結婚の返事はまだできない。

でも、ここから始めてみよう。