私は会議室に連れて行かれた。

恐る恐る椅子に座った。

彼はどかっと椅子に座って足を組んで腕を組んだ。

「この前は君と話せてよかったよ、"さくら"さん」

その名前を呼ばれて、私は顔が真っ赤になった。

あの日とは違って鋭い目つき。

「申し訳ありませんでした」

「何がだ?」

「副業を...会社の規則を破って...」

「なぜやってる?」

「実家の借金があって...返済が...」

副社長は黙って私を見つめていた。

「交換条件をしないか?」

「え?」

「俺がその借金を一部肩代わりする。」

私はびっくりして立ち上がった。

「本当ですか!?」

「ああ。その代わり……」

その代わり……?

「俺専属の嬢になって欲しい。」

「へ?」

意味がわからなかった。

「どういう事でしょう…?」

彼はゆっくり私に近づいてきた。

「俺の家で俺だけのために接待するんだよ」

この人の家で……?

「俺が君を雇う。ラウンジより高い金を払う。だからあそこはすぐに辞めろ」

彼の瞳に嘘や偽りは感じられなかった。

「ちょっと考えさせてください...」

「わかった。だが返事は明日までだ」

明日!?早すぎる!

私は混乱していた。

「あの、あなたはもしかして……」

「俺を知らないのか……?」

私を少し睨んだ。

「副社長の河内だよ。」

ふ、副社長!?

絶句した……。

ヤバい……色々ヤバい……。

私は顔を覆って打ちひしがれていた。

「君の名前は?」

突然真横から声をかけられてびっくりした。

「わ!私は、藤田優美です!」

河内さんはスマホを出した。

「連絡先教えて」

「はい……」

複雑な心境の中、副社長とプライベートで繋がってしまった。

「じゃあ、藤田さん、いい返事待ってる」

そのまま河内さんは会議室を出て行った。

まさかあの夜のお客さんが会社の副社長だったなんて。

彼専用の嬢って……。

彼の家に言って、二人きり?

ただの接客と同じで済むの?

そんなわけがない!

断ったらクビになるのかな……。

なるべくクビは回避したい。

借金を肩代わりする代わりに、専属の嬢になる……。

なかなか答えが出せなかった。