──次の日
今度河内さんに茶道教室に連れて行ってもらえるのが楽しみで、気合を入れて仕事をこなそうとしていた。
しかし、河内さんは数日出張に行ってしまった……。
寂しい……一人きり。
河内さんがいなければこの会社で私はひとりぼっちだ。
でも仕事なんだからそんな事言ってられない。
指示されていた資料作成をしていたら、通称企画開発部の部屋のドアをノックされた。
え、だれ……?
河内さん以外にここに入る人はいない。
恐る恐る私はドアを開けた。
すると、そこにいたのは、ニコニコした笑顔を浮かべた男の人だった。
「おはようございまーす!」
テンションが高めの人だった。
すらっと背が高くて、河内さんほどじゃないけどイケメンだった。
「何かご用でしょうか……?」
突然謎の男の人の来訪に怯えていた。
「あなたが藤田さん?」
「はい、そうですが……」
なんなんだろう……。
「副社長の命令で今日からここに一時的に配属になった、永瀬でーす!」
「え!今日から配属!?」
そんなの聞いてない!
「安心して。私、女の子に興味ないから」
『私』……?
「どういう事でしょうか……?」
「俗にいう、トランスジェンダーってやつ」
トランスジェンダーって確か、体と心の性別が違う人の事だったかな……。
永瀬さんは他の従業員と一緒にデスクや椅子やパソコンを持ってきた。
そして永瀬さんの席がこの部屋にできた。
「副社長の命令ってのはなんですか……?」
永瀬さんはパソコンを立ち上げてセットアップしていた。
「藤田さんを一人にするのが不安だから、護衛を頼まれたの。私は見た目は男だから利用されてるのよね……」
複雑そうな表情をしていた。
「副社長と仲がいいんですか?」
「前の職場で知り合ったの。その時上司のパワハラでしんどくて……それを目の当たりにした彼が声をかけてくれたの」
河内さんは私以外にもそういった人を助けていたんだ。
ふと河内さんの姿を思い出して胸がぎゅっとなった。
「あなたもそんな感じでしょ?」
永瀬さんは優しい笑みを浮かべた。
「あの人に出会えた私達はラッキーよ」
そうなのかもしれない。
あの人がいなかったら、私はもうとっくにこの会社は辞めていた。
そのまま河内さんが戻ってくるまでの数日、永瀬さんと仕事をしながら色んな話をして、充実した時間になった。
そして、やっと河内さんが帰ってきた──
朝いきなり企画開発部ドアがバン!と開かれて驚いた。
河内さんは真っ直ぐに私の方に来た。
そして、永瀬さんの方を向いた。
「暫く席を外せ」
永瀬さんはやれやれといったかんじで部屋を出て行った。
数日ぶりの河内さん。
胸がキューンと苦しくなった。
「お帰りなさい」
河内さんは私の事をぎゅっと抱きしめてくれた。
「仕事中にすまない。会いたかった、ずっと」
「私もです」
涙が出そうなくらい心が震えた。
その時ドアをノックされた。
「私はいつまでここで待たされるの?」
永瀬さんがやや不機嫌だった。
その後私は永瀬さんに謝って、永瀬さんは呆れた表情をしていたけど……
「藤田さん溺愛されてるね。重そうな男に」
河内さんは永瀬さんを睨んだ。
「もう戻っていい」
クスクス笑って、その日に永瀬さんは元の部署に戻った。
「大丈夫だったか?あいつといて」
「とても楽しかったですよ。河内さんも信頼してるから永瀬さんをここに呼んだんですよね?」
河内さんは少し恥ずかしそうな顔をして、副社長室に戻った。
今度河内さんに茶道教室に連れて行ってもらえるのが楽しみで、気合を入れて仕事をこなそうとしていた。
しかし、河内さんは数日出張に行ってしまった……。
寂しい……一人きり。
河内さんがいなければこの会社で私はひとりぼっちだ。
でも仕事なんだからそんな事言ってられない。
指示されていた資料作成をしていたら、通称企画開発部の部屋のドアをノックされた。
え、だれ……?
河内さん以外にここに入る人はいない。
恐る恐る私はドアを開けた。
すると、そこにいたのは、ニコニコした笑顔を浮かべた男の人だった。
「おはようございまーす!」
テンションが高めの人だった。
すらっと背が高くて、河内さんほどじゃないけどイケメンだった。
「何かご用でしょうか……?」
突然謎の男の人の来訪に怯えていた。
「あなたが藤田さん?」
「はい、そうですが……」
なんなんだろう……。
「副社長の命令で今日からここに一時的に配属になった、永瀬でーす!」
「え!今日から配属!?」
そんなの聞いてない!
「安心して。私、女の子に興味ないから」
『私』……?
「どういう事でしょうか……?」
「俗にいう、トランスジェンダーってやつ」
トランスジェンダーって確か、体と心の性別が違う人の事だったかな……。
永瀬さんは他の従業員と一緒にデスクや椅子やパソコンを持ってきた。
そして永瀬さんの席がこの部屋にできた。
「副社長の命令ってのはなんですか……?」
永瀬さんはパソコンを立ち上げてセットアップしていた。
「藤田さんを一人にするのが不安だから、護衛を頼まれたの。私は見た目は男だから利用されてるのよね……」
複雑そうな表情をしていた。
「副社長と仲がいいんですか?」
「前の職場で知り合ったの。その時上司のパワハラでしんどくて……それを目の当たりにした彼が声をかけてくれたの」
河内さんは私以外にもそういった人を助けていたんだ。
ふと河内さんの姿を思い出して胸がぎゅっとなった。
「あなたもそんな感じでしょ?」
永瀬さんは優しい笑みを浮かべた。
「あの人に出会えた私達はラッキーよ」
そうなのかもしれない。
あの人がいなかったら、私はもうとっくにこの会社は辞めていた。
そのまま河内さんが戻ってくるまでの数日、永瀬さんと仕事をしながら色んな話をして、充実した時間になった。
そして、やっと河内さんが帰ってきた──
朝いきなり企画開発部ドアがバン!と開かれて驚いた。
河内さんは真っ直ぐに私の方に来た。
そして、永瀬さんの方を向いた。
「暫く席を外せ」
永瀬さんはやれやれといったかんじで部屋を出て行った。
数日ぶりの河内さん。
胸がキューンと苦しくなった。
「お帰りなさい」
河内さんは私の事をぎゅっと抱きしめてくれた。
「仕事中にすまない。会いたかった、ずっと」
「私もです」
涙が出そうなくらい心が震えた。
その時ドアをノックされた。
「私はいつまでここで待たされるの?」
永瀬さんがやや不機嫌だった。
その後私は永瀬さんに謝って、永瀬さんは呆れた表情をしていたけど……
「藤田さん溺愛されてるね。重そうな男に」
河内さんは永瀬さんを睨んだ。
「もう戻っていい」
クスクス笑って、その日に永瀬さんは元の部署に戻った。
「大丈夫だったか?あいつといて」
「とても楽しかったですよ。河内さんも信頼してるから永瀬さんをここに呼んだんですよね?」
河内さんは少し恥ずかしそうな顔をして、副社長室に戻った。


